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あまこい
【学園物 官能小説】

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不安-3

佳奈が堀田に傷付けられている。ジュンは少しホッとしていた、自分が原因で佳奈の態度が可笑しくなっていると思っていたが、原因は佳奈の彼氏堀田。仲を取りまとめるだけで問題ないだろと、ジュンはその時軽く考えた。傷付けられていると言っても彼氏と彼女だ、元々好き同士な二人のいざこざ、そうジュンは思った。
それよりも、真琴の事の方がジュンを悩ませる。あんなに好きだった真琴に対し今は不信感が自分を悩ませる、他人に言われてそれを信じてしまう自分は情けないと思う、だが何故かそれが拭えない、じわじわと憎しみが湧いてくるのが分かる。何が憎いわけではない、でもこの心の奥底にあるのは憎しみだ。真琴に対しての健全なる憎しみがジュンの中で沸騰する湯気の様に煙たくそして心を掻き立てていた。

家に帰ると、環がエプロン姿でジュンを迎えてきた。

「お帰り、ジュン坊。今日はから揚げよ」

「ただいまタマ姉、母さんはもう寝た?」

「うん、まだ体調が悪いみたい」

「そっか、タマ姉も風邪引かないように気をつけなよ」

「あら、心配してくれているの」

「まあ、一様お世話になっているから」

「ジュン坊はやっぱり優しいね」

環はニッコリと微笑み掛けた。照れる様に頬をかきジュンは言った。

「タマ姉はずるいよ、僕は優しくないし、どちらかと言うと卑怯な奴だ、それをサラっと優しいと言われると、本当にそう思えてくる。そう言うのずるいよ」

「あら、私は本当の事を言っているだけよ。小さい頃からジュンはいつもそう、優しい子だった。剣道を始めた理由もその優しさじゃない、それに私はジュン坊を一度も卑怯な子だとは思ったことはないわ、真っすぐ物事に立ち向かうジュン坊は素敵だと思う。自分が弱くても、真っすぐ向かう。それが私の中に映るジュン坊、それは昔も今も変わらない、だから自分を卑怯だとは言わないの」

「………うん」

ジュンは恥ずかしそうに頷くと気まずいというそぶりで自分の部屋に入って行った。
 部屋に入ると、鞄をスッと床に置き部屋の奥にある机に近寄り、じっと机見詰めた。フっと横にある窓ガラスに顔を向け、遠くを眺めたジュンの目には涙がこぼれていた。


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