初めてのライヴ-8
ライヴ最初の曲....私は不安だった....ステージの上でメンバーと合わせた事がなかったので....香奈さんが遅れた時などに代わりに参加したり....家で姉と二人でやった事くらいしかなかった....しかし....いざ始まってしまえばそんな事は関係なかった....
「どう思うあの子?」
敦が陽太に話しかけた。
「このバンドの顔になってるね!ヴォーカルに関しては言う事ないし....ギターのテクは香奈さんに負けてるけど....って言っても香奈さんのギターテクが凄過ぎるんだけど....他の奴らと比べると上手いんじゃないかな!」
「陽太が言うなら確かだな!」
「あっちゃんは違うの?」
「イヤ!....ただあの子が香奈に劣っている所があるとしたら経験だな!....って偉そうに言える立場じゃないんだけどな!」
「それは俺も同じ....でも...やっぱり凄いと思うよ!あの子は.....」
「今日で解散だなんて...本当に惜しいよなぁ....」
「うん...なんとかならないの?あっちゃん!」
「俺に言われても.....」
二人はトワイライト・ブルーのラストステージに見入っていた.....
「みんな!またね!!」
私はこの言葉でライヴを締めくくった。
その夜、歩美さんの家でみんな集まった。みんなが今日のライヴの話しで盛り上がっている時
「本当に今日で最後なの?」
姉がふと漏らした。
「仕方ないじゃない...私だって続けたいよ....でも....就職したから....今までのようには....」
歩美さんが答えた....
「時間は創るモノ...ですよ!」
それは私達の一番新しい曲でライヴの最後の曲の歌詞....
「好きな事をやる時間なら特に....」
「えっ!?」
歩美さんが私の顔を見た。「ゴメンナサイ...生意気な事を言って....」
私は下を向いた。
「美咲ちゃんの言う通りかもね....美里はバンドと受験勉強を両立させて大学にも合格したのに....私達は初めから諦めていた....歩美...菫...違う?」
「そうね!!今までと同じとはいかないけど....続けようよ!ねっ菫?」
「うん...そうだね!!せっかく美咲ちゃんが加わってくれた事だし.....これからも宜しくね!」
菫さんが私に右手を差し出した。私は菫さんの手を握り締めた。私達の手の上に歩美さんと香奈さん....そして姉の手が重なった。とりあえず解散は避けられた....やっぱりみんな音楽が好きなんだ....
昨日と今日の私達のライヴの様子がYouTubeで公開されていた....
私は全然気づいていなかったが....この事が私の運命を変える事になるとは....その時はまだ知る由もなかった....