初めてのライヴ-3
「あっちゃん...香奈さん達くるよ!」
陽太が嬉しそうに笑った。敦は陽太の顔を見た。
「あの子...香奈さんがずっと言ってた子だよね?」
「ああ....」
「今まで...おとなしくって....なんでそこまで熱心に誘うのか信じられなかったけど....やっと香奈さんが言って事わかったよ!....まさかあんなに気が強いとは思わなかった....あの子....きっとヤルよ!!」
「えっ?」
「あの子...人を惹きつける何かを持っている....自然に....あの子を目で追ってしまう....もしも....あの子の歌が本物なら....俺達もうかうかしてられないよ!!」
「そうだな....演奏のレベルは俺達とあまり変わらない....言っちゃ悪いけど....キーボードは負けているからな....しかし....お前嬉しそうだな?」
「あたり前だよ!俺...香奈さん達の歌好きだもん!」
陽太は嬉しそうに笑った。
予想以上にredのステージは凄かった....観客全てを熱狂させていた....誰もが明日のステージに立つのはredだと信じて疑わなかった....
私は右手を胸に当てて、いつもの言葉を自分に言い聞かせていた....
「美咲?何言ってるの?」
姉が小声で聞いてきた。
「ちょっとした自己暗示みたいな事....」
私が答えると
「えっ?何?何?私達にも教えて!!」
みんなが集まって来た。
「じゃあ...ちょっと照れくさいけど....円陣を組みましょうか!?」
私が照れて言うと
「今日ぐらいはいいか....」
みんなが輪になって集まった。
「左手で隣の人の肩を抱いて、右手を中心に差し出して下さい。」
私はみんなが顔を見て
「それじゃあ行きます!」
みんなが頷いた。
私は大きく息を吸って
「ステージに立てば観客全てが自分を見ていると思え!!ステージの上では自分立ち位置、担当楽器は関係ない!!自分が主役!!自分が出来る100%のパフォーマンスを見せよう!!我等トワイライト......」
「ブルー!!」
私達は右手を上に突き上げた。
私達がステージに上がり、準備が終わっても、そこはredのライヴの余韻に包まれていた...redのライヴが目的だったのだろう出口に向かう人の姿もあった....私は悔しかった....私達の音楽を聞いて....その途中で帰るのなら....まだ我慢出来る....しかし....
(私達の音楽を聞いて!!)
私は思いを込めて叫んだ....
「Haaaaaaaaaaa........」
私は少し前屈みになって叫びはじめ、それから伸び上がり、上を向き、最後は両手でマイクを持ち叫び続けた。
美咲の歌を楽しみにしていると
「あれっ!織田さんも来ていたんですか?」
左側から声をかけられた。見るとそこには、葵ちゃんが立っていた。
「葵ちゃんも来てたんだ!」
「ハイ!ボク...redのファンなんです。」
「そう.....で...帰るの?」
「redのライヴも見たし....織田さんは?」
「私は...次のトワイライト・ブルーかな!!」
「トワイライト・ブルー?」
葵ちゃんは不思議そうな顔をした。
「騙されたと思って見て行ったほうがいいよ!!絶対損はしないから!」
「えっ?」
その時ステージから叫び声が聞こえてきた。ステージを見た葵ちゃんが嬉しそうに
「まさか!!」
私を信じられないという顔をして見つめる葵ちゃんに、私は大きく頷いて
「だから...見て行って損はしないって言ったでしょう!」
「どうして美咲先輩が....」
「詳しい話しはあとから...ステージに集中しなさい!葵ちゃんが神推ししている美咲のステージに!」
葵ちゃんは笑顔を浮かべながらステージを見つめていた。