初めてのライヴ-2
ミニライヴの順番を決める抽選に行っていた歩美さんと香奈さんが戻ってきた。
「6番目だった....」
歩美さんがポツリと言った。しかしみんなはそれより気になっている事があった....
「red-diamondは?」
菫さんが一番気になっている事を聞いた。red-diamondは去年の優勝バンド...通称red....姉の話しでは、去年redが客を持っていって後のバンドの演奏をほとんど聞いていなかったという信じられない事になった。デビューの話が来ているという噂も頷ける話だ。
「redは5番目....みんな....ゴメン.....くじ運無いなぁ....私は....」
力ない声で歩美さんが呟いた。
「何言ってるの!この"祭り"に参加出来ただけでも満足してるよ......」
菫さんは出来るだけ明るく言ったけど....みんなは....
「何黄昏てるの?」
声のしたほうを見ると敦(あつし)さんが立っていた。敦さんは香奈さんの彼氏で....redのリーダーでヴォーカル&ギター担当だ....
「何しに来たのよ!」
歩美さんがわざと悪態をつくと
「香奈が声が出ないってメールが来てたから....大丈夫かなぁって....」
敦さんが心配そうに言うと
「ダメ!」
香奈さんは両手でバツ印を作った。
「じゃあライヴどうするんだよ!」
「それは心配ない!この子がいるから!」
香奈さんが私を指差した。
「えぇっ!俺..香奈さんの声好きだったんだけどなぁ!本当に大丈夫なの?この子で!」
敦さんと一緒に来ていた陽太(ようた)さんが口を開いた。陽太さんはredのベース担当で敦さんの二年後輩で私の一つ上である。一応顔見知りではあるが、陽太さんの言い方にはムカついた。
「redの奏でる音楽は好きだし....凄いと思う....だけど....私の歌を聞いた事もないくせに....声も楽器の一つだって事証明してあげる....人を見下してると痛い目にあうよ!!....そんなんじゃ明日のステージ....立っているのは....私達だよ!!」
普段どちらかと言えばおとなしい私の言葉に、みんな言葉を失った。
「恐い恐い...そんなに睨んでたら可愛い顔が台無しだよ!....行こう!あっちゃん!」
「あっ...ああ...」
敦さんと陽太さんは離れて行った。
「美咲ちゃん!よく言った!やっぱり美咲ちゃんはうちのメンバーだよ!」
真っ先に口を聞いたのは菫さんだった。
「珍しいね!美咲があんな言い方をするなんて....よっぽどムカついたのね!」
姉も笑顔を浮かべながら言った。
「ムカついたのは事実だけど....ああ言ったのは自分にプレッシャーをかけるため.....」
「何で自分にプレッシャーをかけるの?」
歩美さんが不思議そうな顔をしていた....
「私は.......私は追い込まれれば、追い込まれるほど力を発揮するタイプなんだって....だから自分で自分を追い込んでみた....」
「大丈夫なの?そんな事して.....」
姉が心配そうに見ていた。
「別に.....やっと見つけたやりたい事だから....」
「えっ?」
聞き返してきた姉に
「ううん...何でもない....」
私は慌ててごまかした。
「陽太君はあんな事言う子じゃなかったんだけど...」香奈さんが呟いた....