夕暮れ-2
「僕、真琴先輩のこと好きとか言いながら、本当は先輩の身体だけを求めていて……最低です。
そしたら本当に自分が先輩の事が好きなのか信じられなくなって、恋とか愛とか分からなくなって、自分が恥ずかしいんです……」
「ジュン君……」
何も言えない真琴、彼女もまた、ジュンに甘え、彼を傷つけた。ジュンと同類だと思えた。
「先輩、僕は先輩には相応しくない最低な男です。だから、僕に関らない方がいいです、僕が先輩を好きと言った言葉は嘘で、間違いで、僕は……」
「待って、相応しくないって、そんなこと無い、それを言うなら私の方がジュン君に相応しくないわ、私はあなたの心を見透かして、あなたに甘えたの、そんな汚い私には、純粋なあなたに相応しくないわ、そんなに自分を悲観しないでジュン君」
真琴の目から、一筋の涙が流れていた。
「先輩?」
その涙にジュンは驚いた、一体何が起きたのかと、
「先輩、なんで……」
真琴は一筋の涙を拭きながら言った。
「私はあなたが好きです。佐々木 純
私はあなたの心に惹かれました」
「……え」
意外な言葉にジュンは驚き、鳥肌が立った、そして言葉が出ない。
「何か言ってよ、ジュン君」
ジュンは言葉を震わせて言う。
「僕なんかでいいんですか?僕はただ貴女の身体を求めた男ですよ」
真琴は笑いながら言った。
「女子の身体を求めない男子は異常よ、ジュン君は極普通の男子、自分を悲観しないで、ただ私を見てよ」
「…………」
「それとも、私のこと嫌いになった」
「嫌いじゃないです、でもどうして良いか……僕はあなたに近づくのが怖い。自分の弱い所が出てくるんです、だから、どうしていいか……」
「見せてよ、弱いところ、私は見たい。誰も知らないあなたの弱いところを、その代わり、私も見せるから、私も弱いところ見せるから」
「先輩にも弱いところあるんたすか?そうは見えませんけど」
「あるわ、ジュン君よりも私の方が弱いわ、私は友達がいなくて、信用できる人もいなくて、人を避けていて、自分の言葉を見失って、いつも周りに怯えている、それが私、私は人から言われるようなお嬢様なんかじゃない、ただの弱虫よ」
「……先輩か?先輩はいつも堂々としているじゃないですか」
「見た目だけね、心の中じゃ、私はいつも怯えている、今だってあなたに避けられないかで怯えているの、見て、私の手、震えているでしょ」
「………」
「少しずつ、少しずつお互いを知ろうよ、私も怖いの、こういうの慣れてないから、でも、あなたとなら近づける筈……」
真琴が見せる手は確かに震えていた。
ジュンはその手を愛おしいと思った。自分の為にここまで怯え震えている人に、ジュンは恋ってこういうものなんだと、迷っていた自分の恋心が解放されたような気がした。
「手、握って良いですか?」
「うん」
ジュンは強く、震えている真琴の手を握った。