xxx by train-8
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その日。
もちろん俺は無断遅刻で、いつも以上に上司の厭味や怒鳴り声を聞き続けることとなった。
だが今朝のこともあったし、最終的に呆れてくれた上司のおかげで残業もなく、不快指数は低い。
会社の最寄り駅に着くと、6年前までは毎日見ていたセーラー服の女の子が視界に入った。
その人物は俺に気づくと歩を進め、正面で立ち止まった。
「―――――私、桜沢 茜。17歳。
オニイサンは?」
『…笹…耕平。…24歳。』
あっけに取られている俺に向かってその少女は、思ったより年上だったけどイケメンだからいいや、と笑った。
胸ポケットにつけている華奢な花のピンが、駅の外灯できらりと輝いた。
現状が変わった訳ではない。
明日もあさっても上司からは理不尽に怒鳴られるだろうし、元彼女を寝取った顔も知らない男のことを考えては胃をむかむかさせるだろう。
それでも、幸か不幸か今日の出会いと再会に、俺は口を緩めた。