あるゲームセンターの風景-8
あれから二週間が過ぎた。
俺は、いつものゲームセンターではなく、別の店に通うようになった。
カオルとの出来事は、俺にとって衝撃的すぎた。
カオルが嫌いなわけではない、むしろ、彼女があの先を求めたら続けたかもしれない。
あそこで止めてくれて、あるいは助かったのか。
俺は、誰かとの出会いを求めてゲーセンに通っているわけではなかった。
ここでゲームをして、ただ無心になるこの瞬間。
何者かから解放されている時間が好きだった。
その時間を過ごすことで、自由を感じるのだ。
ただ、それでも何かが頭に引っかかっていた。
カオルの内側の温度と柔らかさを覚えていた。思い出すと、体全体が熱くなる。
俺が対戦した感想通り、カオルは情熱的だった。
彼女は、まだあの店に通っているのだろうか。
そんな事を思いながら、対戦をしてもなかなか勝てない。
俺のいるこの店は格段にレベルが高い。地域の強豪が常駐するような店である。
長年ゲームをやり込んでいる俺ですら、彼らに勝つのは至難だった。
反射神経が違った。読みの深さが違った。ゲームの知識力が違った。
対戦するたびに、圧倒的な実力差を感じさせられる。俺は、悔しかった。
相手は俺よりずっと年下である。何故、こうも差がつくのか。
何もさせてもらえず、ただ、負け続けた。
チクショウ! 思わず、台を叩きたくなった、その時――