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あるゲームセンターの風景
【OL/お姉さん 官能小説】

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あるゲームセンターの風景-4

 その日、彼女は別の誰かと対戦していた。
 苦戦しているらしく、既に5連敗している。見てすぐに、ああなるほどと思った。
 この相手は、彼女の知識の欠如を利用しているのだ。
 これではおそらく彼女は負け続けるだけだろう。彼女もそれを悟ったのか、席を立った。 
 その瞬間、俺と目が合う。彼女は、猛烈にむくれていた。

「もう! この人、投げ技ばっかりで全然楽しくないんですよ!」

 俺は少々苦笑した。このジャンルはどうしても勝つか負けるか、殺伐としてしまうのである。
 どうあがいても勝ちにこだわり、手段を選ばないという輩は出てくるのだ。
 そういう相手との対戦がつまらないと思うのは有りうることだが、俺はそれを含めて、格闘ゲームというものが気に入っていた。彼女は、そこまで割り切れないらしい。
 俺はその相手に、乱入してみた。彼女が隣で見ている。

「……投げ技を使うのが分かっているなら、どうという事はないよ」
「へぇ?」
「来ると思ったタイミングでしゃがむといい。そうすると相手の投げが空振りするから」
「はぁ」
「その時に、こうやって反撃するだけ。この人は、君がそういう対応が出来ないと分かったから、投げ技を多用したんだよ。たぶん」
「……やっぱり、強いんですね」
「長くやってるから、色々知ってるだけだよ」
「こういうのって、女の子いなくて男の人には話しかけにくいから……」
「そうかもしれないね。女の子は、ほとんど彼氏連れとかなのかな」
「あたしも……このゲーム、彼氏に覚えさせられたんです」
「へぇ、その彼氏は今日はいないの?」
「もう、ずっと昔に別れちゃいました」
「そりゃ……」
「久しぶりに、この店でこのゲームしてたんですけど、乱入されて、楽しかったんですよね、たくさん負けましたけど」
「……」
「対戦相手の性格が分かるって言ってましたけど、わたしも、少し分かります。この人は何かわたしのレベルに合わせて、付き合ってくれてるんだなって」
「俺は、誰が相手ででも真剣にやりますよ。そうでないと、俺は面白くないから」
「あ、そういえば、まだお名前も聞いてませんね。わたしはカオルと申しますが……」
「名前? えっと、俺は……アベ」
「アベ? さんですか?」
「このゲーム、ABEで登録してるから」
「本名、なんですか?」
「ええ」

 そう答えると、カオルは変わってますね、と笑った。
 俺は単に登録ネームをいちいち考えるのが面倒でそうしただけなんだが、何かツボだったようだ。
 理知的な雰囲気の彼女が笑うと、愛らしさが一段と引き立つような気がする。
 チラと横を見ると、少々タイトなスーツスカートから生える彼女の素足が見えて、ドキッとしてしまった。


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