あるゲームセンターの風景-2
このゲームでの店中の順列は、平均よりはだいぶ上手いが、トップクラスに比べるとやや劣る。
俺のレベルはだいたいそのあたりだろうと思う。
俺は、いつものように、コインを入れ、画面向こうのプレイヤーに挑戦していく。
開幕から激しく攻撃してきた。こういうのは今時珍しい。
まずは間合いをとって、相手の出方を見る。
今の主流はそういう戦法だが、攻め合いに来るなら、それも嫌いじゃない。
対戦を通して、相手の性格が分かった。
この相手は、かなり情熱的な対戦をする。そして、駆け引きが下手なタイプなのだろう。
攻めが正直すぎるのだ。それでは、攻撃が見切られてしまう。
だが、相手の情熱的な攻めに気圧され、俺は結局負けてしまっていた。
普通にやればたぶん勝てるが、どういう訳か、負けた。
俺は一度席を立つと、画面向こうの相手を少し見やった。すると、少々驚いた。
女性である。いかにもOLと思しき、黒のビジネススーツを来た女性だった。
格闘ゲームに女性プレイヤーは、かなり珍しい。
先にも言ったとおり、マニアックすぎるのである。
なんと、俺は、彼女に気圧されてしまっていたのか。
夜9時過ぎ。この日は彼女以外のプレイヤーがいなかった。
しばらく彼女のプレーを眺めると、もう一度乱入した。今度は、俺があっさり勝った。
また彼女が乱入してくる。また、俺が勝った。
彼女には悪いが、俺はもうある程度攻めを見切っている。
俺が10連勝した所で、彼女は対戦をやめたようだ。
俺は、この店ではそこそこやるレベルなので、彼女の腕は決して悪くないはずだ。
彼女は、俺の背後から、俺のプレーを見ているようだった。彼女の表情まではわからない。
俺は、ゲームをそのままクリアすると、その日はそれで帰った。