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あるゲームセンターの風景
【OL/お姉さん 官能小説】

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あるゲームセンターの風景-10

 結局、俺は負けた。
 少々追い詰めたが、地力の差があり過ぎるのだ。
 だが、俺も格上相手にまだまだやれるではないか。不思議な充実感が俺を満たしていた。

「いい顔を、していますね」
「カオル……」
「わたし、何でアベさんがゲームしに通っているのか、今見てて分かった気がします」
「俺は」
「あれから、アベさんが店に来なくなって、嫌われたのかと思って、わたし寝込みそうになっちゃいました。わたし、アベさんの事何も知らないし、連絡先も」
「俺は、ただのゲーマーだよ……」
「この二週間の間に、わたし、この辺りのゲームセンターさんざん探してて、なかなか見つからなくて、このまま会えなくなったらどうしようかと思って」

 カオルは、泣いていた。
 今、俺達は店内に設置されているソファに座っていた。
 この一帯は照明を暗くしてあり、周囲にはレトロゲームが並んである。今、それらを遊ぶプレイヤーはいなかった。
 俺は、横に座るカオルの腰に手をまわし、体を寄せた。

「俺は、カオルさんのことを何も知らないのに」
「わたしは、よく知ってます。だって、何度も対戦したんだから……」

 そのまま、顔を寄せ、カオルにキスをした。そうせずには居られなかったのだ。
 ただ、唇と唇が触れるだけのものだった。

「わたしは、これでゲーセンからは卒業、かもしれませんね」
「卒業? もう、来ないの?」
「わたしは、何か探しものが見つかった気がするから。でも、たぶんアベさんはわたしとは別の何かを、探しているんだと思います。だから、アベさんの卒業はまだ先、かな」
「そうか、寂しく、なるな」
「それで、卒業記念にふたつ、欲しい物があります」
「なにかな?」
「ひとつは、アベさんの携帯番号と連絡先」
「は?」
「もうひとつは――」


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