美しき物-1
彼女は僕の首に掛かるタオルの両端を掴み、自分の方に引っ張った。僕は首が引っ張られ、彼女の顔に近付く、そして彼女は僕の耳元に口を近付け囁いた。
「ジュンくんって童貞でしょ、今日で童貞卒業だね」
甘ったるい彼女の声が僕の鼓膜を揺らす。僕は思わず声を発した。
「あっ…」
「何?動揺してるの?童貞捨てるの怖くなった?」
挑発的な彼女の言葉に僕は怯む。性行為が怖い、とジワジワ感じ入る。未知の体験、未知の感覚、初めてってやはり怖いんだ、彼女の言葉は僕に恐怖心を与える。僕は欲望と恐怖でたじろぎながら、見栄を張れないくせに、見栄を張る。
「怖くないですよ、男ですから」
かなり声が震えていた。彼女に見栄は張れない事は分っている。でも、こうでもしなきゃ自分の恐怖心に負ける。そっちの方がよっぽど男じゃない。