憧れの人-1
槙野先輩は前髪を掻き分けると、僕を見るや、
「君、確か…一年の佐々木君だよね」
「えっあ、はい」
驚いた、僕の名前を知ってるなんて、何故だろ。
「何故知っているんですか? 僕の名前」
彼女は竹刀を持つようなジェスチャーをして言った。
「うちの学校、剣道部だけは強いでしょ。そんな剣道部の新人エースって呼ばれてる佐々木君だもの、皆知ってるよ」
その、にこやかな彼女の煽てに僕は照れてしまった。
「新人エースって言われても、前の大会でたまたま成績が良かっただけですよ」
「そう、でも有名よ」
彼女はそう言うと、バックからタオルを取り出し、髪や服をふき始めた。