夏の忘れもの-2
狭いながらも、小綺麗なきちんとした部屋だった。
マキは汗をかいたからと、さっと別室で着替えて、今は簡単な料理をしているようだ。
見るとミニスカートからスラッとした白い足が伸びていて、俺は少しドギマギしてしまう。料理をしている姿が、とても様になっていた。彼女は、もう大人の女性なのだ。
「働いた後のビールが美味しいんだよね〜。ほら、アキラも遠慮せず飲みなよ?」
「えぇ……でも、俺まだ未成年ですし」
「ハァ〜? あのアキラがそんな事言うんだ……あんた、すっかり骨抜きになっちゃって」
「なんとでも言ってください」
「あんた、ケンカやたら強かったわよねぇ。あの頃はだいぶ目立ってたんだよ」
「そうでもないですよ、相手が大したこと無かっただけで」
「あたし、結構、好きだったんだぜ?」
「……マキ先輩、今は誰か相手、いるんでしょう?」
「ちょっとね〜、でも別れちゃいそうなんだ」
「へぇ、どうしてですか?」
「なんかね。なんとなく、わかっちゃうんだ」
言うと、ほんの少し、彼女は表情を曇らせた。
俺は、あまり深入りしないことにした。
「あんたは、彼女とどうなんだい?」
「いや、どうと言われても、どうもないですよ」
「まだ、やってないの?」
「…………」
「じゃあ、まだ童貞?」
「…………」
「そっか。ふふ、じゃあ、あたしがまた昔みたいに、してあげようか?」
「そんな、からかわないでくださいよ」
昔というのは、中学の頃の話である。
当時のマキと何故か女の体のついての話になった。
俺が女の裸をまだ見た事がないと言うと、じゃああたしが見せてやるから、という話になったのだ。
そのかわり、と彼女は条件を出した。まず、お前の裸を見せてみろ、と。
えっ、と思ったが、どうしても俺は女の裸を直接見たみたかった。
マキに連れられ、体育倉庫に行った。そこで、俺は自分の裸を彼女に見せた。
俺のものは、既に勃っていた。まだ、皮をかぶっていて、マキがしげしげとそれを見たものだ。
彼女は、へぇ、と俺のものを手に取り、こうするの?と、皮をむいて、おもむろに扱きはじめた。その瞬間に、俺はもう我慢できず、射精してしまったのだ。
結局、彼女は裸を見せてくれなかった。俺は、完全に騙されたのだ。
彼女は悪びれた風もなく、気持よかったならいいだろ? などと言った。
それ以来、俺は彼女に苦手意識を持った。
そのまま、彼女が中学を卒業して以来、俺と彼女が会うことはなかった。
俺にとっては、ちょっとしたトラウマのようなものである。