一部の地域で迷惑-12
「はぁい♪」
『……姉ちゃん?!』
携帯を奪った小夜美は芳郎に事情を話し、勝手に切って携帯を璃子に返した。
「こっち来るって。お菓子食べながら待ちましょ」
徹雄の絶品お菓子を食べながら待つ事5分、芳郎が息を切らして店に飛び込んでくる。
「璃子!!」
「芳郎くん」
「霊気酔いだって?!大丈夫かっ??」
芳郎は心配そうに璃子の頬に手で触れた。
「うん、大丈夫。小夜美さんのハーブティー効くねぇ」
璃子はニコニコと答え、芳郎はホッと息をつく。
そして、自分達に注がれる視線にハッと気づいた。
「あ……ぅ……」
じわぁっと赤くなった芳郎を目の前に見て、璃子もつられて恥ずかしくなる。
そういえば、この場の全員が2人がヤってる事を知っているのだ。
「い、行くか」
「うん……小夜美さん、お世話になりました」
「いつでも来てね、璃子ちゃん」
「はい。沙耶ちゃん、またね」
『まったねぇ〜』
そそくさと店を後にする2人を見送った3人(?)は、ふぅ〜っと息を吐く。
「どう思う?」
手を振りながら小夜美は横に立つ徹雄に聞いた。
「どうって……芳郎は璃子ちゃんにメロメロ、璃子ちゃんはそれに気づかずって感じだろ?」
『そうだけどぉ……璃子だって女の子だし、何とも思ってない人に好奇心だけで処女捧げるかなぁ?』
沙耶の言葉を通訳した小夜美と徹雄はお互いを見る。
「お姉ちゃんとしては何とかしなきゃね」
小夜美のセリフに徹雄は顔をひきつらせた。
「俺は暖かく見守った方が……」
「沙耶ちゃんも協力してね♪」
『ガッテンだ!』
鼻唄まじりで店に戻る小夜美の後ろ姿を見ながら徹雄はため息をつく。
余計こじれなきゃいいなあ、と思いつつ徹雄も店に戻った。
電車に乗るのはこりごりだ、と芳郎と璃子はお目当ての店まで歩く。
勿論、店は璃子がネットで検索していた。
「良いお姉さんだね」
「あ?あぁ……まあ、歳離れてるしな……若い母ちゃんって感じだな」
芳郎は歩きながら璃子が持ってる紙袋に気づく。
黒猫マークの入ったそれは明らかに喫茶店『黒猫』のもの。