一部の地域で迷惑-11
「え?あの……」
霊気という言葉がさらりと出てきて璃子は戸惑った。
「あ、ゴメンね。私、近藤小夜美。芳郎の姉で〜す」
「ええ?!」
璃子の驚きにケタケタ笑った小夜美は少し休めば楽になる、と璃子を喫茶店に連れて行く。
「はい、ハーブティー。これ霊気酔いに効くわよ」
「ありがとうございます」
璃子はお礼を言ってハーブティーに口をつけた。
「あ、ホントだ」
飲んだ瞬間、体が軽くなる。
「でしょ〜」
小夜美は両手に顎を乗せてニコニコと答える。
なんとなく居心地が悪くて、カップに口をつけたまま俯いた。
『なんかちょっと見ない内に可愛くなったね、璃子。やっぱ男知ると女って変わるのねぇ』
ブーーーッ
沙耶のセリフに璃子はハーブティーを吹き出す。
真正面に居た小夜美はたまったものではない。
「きゃあっごめんなさい!!」
あたふたと小夜美をハンカチで拭きながら璃子は真っ赤になる。
「あのね、璃子ちゃん」
水分を拭き取った小夜美は申し訳ないように璃子に切り出した。
「私にも霊感があって、沙耶ちゃんの声は聞こえてるの」
璃子はギクリと固まる。
「ま、まさか……」
『ごめ〜ん、璃子。全部喋っちゃった。えへ』
「うそぉっ!!沙耶ちゃんの馬鹿ぁ!」
真っ赤になる璃子に、小夜美は沙耶が何故ここに居るのか、その沙耶から何を聞いたかを話した。
『ごめんねぇ……』
璃子のあまりの狼狽ぶりに、さすがの沙耶も小さくなって謝る。
比喩ではない……本当にコップぐらいの大きさに縮んでいるのだ。
「……もういいよ……また沙耶ちゃんと話せたし……」
『璃子ぉ』
沙耶は感激して人間サイズに戻り、璃子に抱きつく……まあ、璃子には見えていないのだが。
「んふ。でね、璃子ちゃんはうちの弟の事どう思ってるのかなあ?」
小夜美の言葉に璃子は片手を口に当ててガタンと席を立つ。
「大変!!芳郎くんっ!!」
すっかり待ち合わせを忘れていた璃子は、小夜美を無視して慌てて芳郎に電話をかけた。
「もしもしっ芳郎くん?!」
『璃子。今どこ?』
「あ、あのね……」
話そうとした璃子の携帯を小夜美が横から奪う。