上-2
「もっと〜、今日なんか少ない〜」
尿道に残っている精液を吸いだそうとしている少女を無理やり引きはがす。
「けち、減るものじゃないのに……」
「普通に減ってるわっ」
「うぅ……」
「コンビニの廃棄のパンあるからそれでも食べてろ。今日は疲れてるんだ。セックスはまた今度な」
コンビニから持ってきた袋から缶ジュースとサンドイッチを取り出し、少女に渡す。俺も適当な菓子パンを取り出した。――濃厚ミルク風味クリームパン。なんかカレー食ってるときうんこ話題だされた感じだが、気にせず口をつけた。
缶ジュースを飲み干した少女は再び俺の膝の上へ。頼んでもないのに俺のペニスを自分で挿入してきた。
「こら、画面が見えん」
「いいのいいの、じっとしてるから」
「食べながらセックスなんて行儀悪いぞ」
少女の頭を押しのけ、画面に目を向ける。ちょっと目が覚めてしまった。眠くなるまでネットでもしていよう。
数分後。食事を終えた少女はペニスが挿入されたまま俺の膝の上で寝始めてしまった。かわいい寝息をたてているが、このままでは俺が動けない。少女を床におろし、まんぐり返しの体勢にさせる。淫液でぬるぬるになっているマンコに、さきほどまで少女が口をつけていた空き缶を押し当てた。
「ふにゃ!?」
少しだけ力をこめると、空き缶は少女のマンコにずぶずぶと沈んでいく。ずいぶんゆるくなったよなぁ、としみじみ思う。
「寝るならここで寝な、灰皿として使ってやるから」
煙草を取り出し、火をつける。右手でマウス、左手で煙草。もちろん灰は少女のマンコ――に挿入されている空き缶に落とす。機能美とは程遠い灰皿だが、これはこれでなかなか面白い風景だ。
「この格好疲れるよぉ」
何か小言をいったが、聞かなかったことにする。空き缶が突っ込まれている場所が性器だという自覚はないんだろうか。少女はあっという間に寝てしまった。寝てしまったせいでさらにゆるくなったのか、空き缶はさらに置くまで沈んでいく。半分ぐらいは膣から出ていたが、もう3分の2ほど膣に飲み込まれている。このままでは膣を火傷させてしまうかもしれない。性器を灰皿として使うにはもう少し調整が必要なようだ。
そう思っていたとき、家のチャイムがなった。
こんな時間に誰だろう。国営放送の集金や、セールスにしてはやけに早い。そういえば玄関のカギを閉め忘れたなと思ったのと、ドアが開いたのはほぼ同時だった。
「もしもーし、ナオフミいる?」
俺を呼ぶ声。
「ういーっす」
「誰だお前」
冷静につっこむ。ボブカットの小柄な女。手には煙草。法律のインサイドで吸ってるなら20歳以上だが、まだ10代にも見えなくもない。不法侵入者は俺の部屋をなめるように見渡したあと、俺の手元を注視する。
「……」
「さっきから何なんだあんた」
「ちょ、その、なによそれ」
ふと気づく。俺の手元、煙草があり、その先には灰皿がある。
「きれいな顔してるだろ? 灰皿なんだぜ、これ」
不法侵入者はこの世の終わりのような顔をする。――間髪いれずに悲鳴。ドアを勢いよく閉めたあとは、そそくさとどこかに駆けていってしまった。なんだったんだ。朝から騒がしいやつめ。……たしかに普通の人がいきなりこれをみるとびっくりするかもしれない。しかしそれはそれで外に置いていたら魔よけになるんじゃないかと考えていたとき、灰皿が目を覚ました。
「ふにゃ? 誰さっきの」
「なまはげ」
「ナオフミの友達じゃないの?」
「友達なんかいねぇよ」
どだいわずらわしい人間関係は嫌いだ。誰かの顔色をうかがって物事を言ったり、誰かに合わせてお怒ったり泣いたり。うんざりなんだよそういうのは。そしてそういった人間は学校という場所で多く見てきた。虫唾がはしる。灰皿は「そう……」と短く返したあとは、再び寝息を立て始めた。
しかし誰だったんだあれは。久しぶりにまともな人間と喋った気がしたが、勝手に家に入ってくるあたり全然まもとじゃない。記憶をたどる。1つの結論にたどり着いた。――あいつは。
「このアパートの大家」
ずいぶん雰囲気が変わっていた気もするが、間違いない。しかし、なぜ大家が。玄関に目を向ける。一枚の紙が落ちていた。重い腰を上げ、拾いにいく。
「立退き要請書……?」
なんだこりゃ?
そこには想像を絶することが書かれてあったのだ。
<続く>