夢と現実-1
西野冴香は、今年、小さな頃からの夢だった教師の道へと足を踏み入れた。自分は先生からたくさんの感動的な言葉を貰ってきた。いつかそういう立場になり、子供達を勇気づけ、夢を与えられるようになりたいとずっと思ってきた。
そしてようやく教師という立場になれた。冴香は中学校を希望し、望み通りになった。しかしそこは男子校。それだけが始めから不安だった。
担任は1年3組。私立という事で、あちこちから生徒が入学してきた。初めは知らない顔ばかりという事で殆どの生徒は友達がおらず、授業も静かなものだった。教師になりたてで不安の多かった冴香も何とかやっていけそうな感触を得ていた。
しかし1ヶ月もすると教室内でも友達が増え、段々騒がしくなってきた。日を増すごとに授業中も私語が目立ち始め、段々教師の言う事も聞かなくなってくる。
特に女の冴香は、おとなしめな見かけも災いし、完全になめられ始める。そんな生徒に最近本気で悩み始めていた。
どうしたらなめられずにいられるんだろう…、言う事を聞いてくれるんだろう…、そればかり考えてしまう。
他の教師からも、1年3組の授業態度が悪いと責められる事も多くなる。夢にまで見た教師。夢と現実の間で悩む新人女教師、西野冴香がカリスマと呼ばれるまでに至る物語は始まった。