〈不治の病・其の二〉-1
すっかり日は昇り、日差しは強くなっていた。
ナース達は亜矢の事など気にもとめず、いつものように患者達の治療に勤めていた。
足しげくナースステーションと病室を行き交いし、体温測定や身体異状の確認、リハビリの予定などを伝えていた。
と、ナースコールを表示するパネルが点灯し、チカチカと目障りな点滅を繰り返した。
その病室は520B号室。
亜矢がいる病室だ。
(ようやく終わったかしらね?)
一晩中、亜矢が姦されていたのは知っている。
今更助けを呼ぶとは到底思えない。
婦長はインターホンのボタンを押し、通話回路を繋げた。
{終りましたよ〜。いつものトコに棄てたんでヨロシクねぇ}
ナースステーションからB棟の廊下を見れば、満足げな患者達が病室からぞろぞろと出て来ていた。
シャワー室に入る者もいれば、トイレに行く者もいた。
ワラワラと歩きまわる患者達は、やがて、それぞれの病室に戻っていった。
『ちょっと、二人くらい力貸して』
婦長は身近に居たナースに声をかけ、ナースステーションの傍に設置されていた、ストレッチャーと呼ばれるキャスター付きのベッドを押して用具室に向かった。
『…………』
カチャリとドアは開き、婦長達が室内に入ると、薄暗い部屋の中で、衣服処分箱から顔を出した亜矢の姿があった。
タオルで口を塞がれて、がんじがらめにされた亜矢の姿は、精も根も尽き果てたようにグッタリと項垂れ、死んだように動かない。
婦長達に担がれて処分箱から引きずり出されると、股間の穴から精液を流して、噎せるような青臭い異臭を放った。
『酷いわね、全く……』
『早いトコ運ぶわよ』
ストレッチャーに乗せられた亜矢は、自由を奪っているタオルを全て取られ、ベージュ色のタオルケットを被せられ、隠されるようにナースステーションに運ばれた。
そしてナースステーションの中にある、小さな部屋に運ばれていった。
その部屋は、入院患者に検査結果を伝えたり、手術の方法を伝えたりする部屋で、レントゲンのフィルムを見る為の照明ボードなどが設置されていた。
そんな部屋で、亜矢はストレッチャーの上で眠っていた。
数時間ぶりに手足を自由に伸ばして……。