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昔の恋人
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昔の恋人-14

「プリンあるけど、食べるー?」

キッチンから聞かれたので、食べる旨を伝える。
テレビを見ながらまったりと過ごし、矢代がテーブルを片付け、立ち上がる。
キッチンで洗い物をした後、鍋を確認していた。

「おでん?」

俺が聞くと、

「好きだったでしょ?」

と笑って聞く。
温めたらすぐに食べれる状態だという。


矢代はきっと俺の全てを覚えてくれてるんだと思う。
俺は付き合っているときと同じ様に過ごしている。

さっきの大輔さんを思い出す。
大輔さんが由梨さんしかいないように、俺にはやっぱり矢代が必要な気がする。
別れてからを思い返した。
いい感じの人が現れても矢代を忘れさせてくれる人はいなかった。

あの事故からお互い距離ができてしまった。
お互い嫌いになった訳ではなかった。
ただ、お互い自信がなくなり、別れたのだ。
あれから矢代の話は一度聞いた。
転勤になり、こっちにきた時には彼氏はいないと言っていた。
俺にもまだチャンスはあるだろうか。


矢代がキッチンからリビングに戻り、荷物に手を伸ばした時、さっきみたいに腕を掴んでいた。
本気で帰したくないと思った。

何か言いかけた矢代だが、それから先は言わなかった。
俺も何故かわからなかったが、ただ、矢代を抱きしめたかった。
久々に触れた矢代は、シャンプーも香水も全然変わってなくて、ただ、少し痩せた気がした。

「明日まで…いてくれ。」

そう言うと、矢代は少し困った顔で頷いた。

ダメだと思いながらつい矢代の唇に触れてしまう。
先に言葉にしなければいけないのかもしれない。
でももう止まらなかった…



何か音がしたような気がする。
腕を動かそうとすると、右手が動かない。
ふと目を開けると、右腕の上に寝ている矢代がいた。
いつもの表情とちがい、脱力した眉、薄く開いた口から小さな寝息を立て、気持ち良さそうに寝ている。

抱きしめたかったが、寝ているのを起こすのはしのびない。
静かに起さないようベッドから抜け出す。
流石に素っ裸では寒いので、昨晩脱ぎ散らかした服を拾い、下着だけをはいて、シャワーを浴びに向かう。

シャワーからあがっても矢代は起きていなかった。
相変わらず朝は苦手らしい。
変わらないことに安心しながら、朝食を準備する。

トーストに目玉焼き。
牛乳にコーヒーに矢代が買ってきてくれたリンゴ。
同じ人間が作っても、やはり一人の時とは大違いだ。


寝室に向かい、矢代を起こす。


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