春の嵐-5
「あっ…あっ…んっ…
イヤ…ぁ…あっ…」
女は頭を揺すられながら時折、横に顔を振る。
胸の中に抱いてみて、つくづく美しい女だと感じた。
乳房が波を打ち、少し色素がかった乳首が大きく揺れて見える。
急場の事であれば避妊などしていない。
膣内で射精してしまってはいくらなんでも気がひける。
けれどこの感触をもうちょっと、もうちょっと…と惜しんでいるうちに浩一は一気に射精してしまった。
慌てて引き抜いたが最後の一搾りがだらりと先端からこぼれ落ちただけで間に合わず、後はすべて女の膣内に噴き出してしまった。
薄紫に重なる二枚貝の触手のような女性器から白濁した体液がどろりと流れ落ちてきた。
浩一はしばらくその光景を眺めている。
故郷を思わせる桜の開花を眺めるような穏やかな気持ちで一時的にもこの女とひとつになれた言葉にならない安堵の中で女の性器を眺めているのだった。
女は裸のままで精液をたらして、ぐぅぐぅとイビキをかきながら眠りに落ちていた。
… … … …
目が覚めると女は浩一のシャツを羽織り、そのボタンを長い爪先で止めていた。
「ごめんね昨日は…」
なんと答えていいのだろう?
女のぬくもりがまだ残るベッドの中で自分のシャツを着て身なりを整える美人を呆然と眺めている。
「あいつったら、ホント最低なんだから…
何度言っても女と切れないで挙句にアタシが留守の間に女なんか連れ込んでんだから…」
肩をいからせて独り言のように言い放つ。
「だけどさぁ…アタシがいないとダメなのよね。
だから…お・あ・い・こ。」
女は間もなくして帰って行った。
トイレは汚物にまみれたままだし、泥酔した女の体を引きずってあちこちがめちゃくちゃに散らかっていた。
そして、その女は汚れた服を抱えると自分の真っ赤な下着と浩一のシャツだけ着けて帰って行ったのだ。
とりあえず浩一はそのままにして、慌ただしく出勤の準備をしなければならない。
カーテンを開いてベランダの外を眺めると公園の桜は今まさに満開に咲き誇り、薄桃色に霞立つかのように細かな花びらを舞わせていた。
「春の嵐ってやつだろな…」
浩一は眼下に見える桜に話しかけるように、そう一言呟いた。
それから数日経ったある朝。
浩一はベランダの片隅に奇妙な物を見た。
たぶん重りを付けたのであろうか、紫の下着に包まれたレモンが投げ込まれていたのだった。
酔った女がそれを取りに来たのはその夜の事だった。
ー完ー