第一章―2-8
「・・・ん・・・」
少し気を失っていた瑞稀が目を覚ます。
身体を起こそうとすると、途端に身体に伝わる鈍い痛み。先程、壁に叩きつけられたのが効いているようだ・・。痛みに耐え、なんとか立ち上がる。
すると、耳に響く凄まじい音。
「な・・に・・?」
ふらふらしながらも、顔を上げた瑞稀の目に入ったのは零と大剣を構えた恵梨が戦っていた。
「・・恵梨!?」
零の精霊術で飛ばされても何度も立ち上がる恵梨。その姿に、瑞稀の心が動く。
「私、何やってるの・・。恵梨はちゃんとバングルを使えてる。けど、私はまだ出来てない・・。」
瑞稀はふと、自分の手首に治まっているバングルを見る。それにそっと手を重ねる。
「・・私に力を下さい。まだ・・やられる訳にはいかないんだ!」
そんな瑞稀の言葉も虚しく、バングルには全く届かない。
「・・どうしよう。恵梨はどうやったのかな・・」
ふと、恵梨を見る。
そして、やっと気付いた・・。
「・・!」
恵梨の姿はもうボロボロだった・・。
「恵梨!もういい!止めて!」
しかし、瑞稀の必死な声も戦いの音にかき消されてしまう。
「恵梨!零!やめて!・・もう・・」
瑞稀は座り込んで涙をこぼした。
声が聞こえていない2人に対してじゃない。
身体を襲う痛みだけじゃない、怖さや不安のあまりに自分の身体が言う事を聞かなくなっている事に・・だった・・。
「・・何も出来ない・・何にも・・」
小さい声で呟くように発された声。
聞く者は・・いない。
「そんなの・・いやだよ!」