第3章-4
二人の顔を見つめ、真梨子は再び眼を閉じた。
もう心の中ではセックスに対する不安は無かった。
無かった、というよりもそれを克服したと言った方が正しいのかもしれない。
今までの真梨子の心に覆い被さっていた重い扉が開くと、
何故か新しい世界が見えてきたような気がした。
(もう、自分は悩むのは止めよう、これで良いの、今までに嫌と言うほど悩んだし、
それで充分、これからは新しい恋をして、その喜びを心から感じたい)
そう思っていると同時に、再び快楽が真梨子の身体に訪れ始めていた。
真梨子の女として大切なところ、敏感なところ・・・
その女の園が開かれたのである。
痺れるような感覚、始めて味わう性の喜び、とでもいえばいいのか。
そのとき、芳念の手は真梨子のふっくらとした下腹部に触れていた。
それが始めは撫でているのか、触っているのか、と思わせるほど静かだった。
まるで母親が赤子の頬を撫でるように優しかった。
その手が真梨子の恥毛に触れたとき、真梨子はぞくっとした。
若者の手は真梨子の縦に裂けた割れ目に沿って触れ、そこをいざなう。
そんな愛し方があるのかと思うほど、優しかった。
(あぁ・・)
思わず真梨子は身体を微かに動かし、股を開いた。
身体が感じてくると女の身体は自然とそのようになる。
それを察したのか、芳念の反対の手は真梨子の太股の内側を滑る。
その部屋で聞こえる音と言えば、真梨子の切ない吐息と、
若者が触っている肌の音だけだった。
しかし、それだけではなかった。
真梨子の上半身も同じような快楽の嵐が吹いていた。
それは住職が真梨子の上半身を愛撫していたからである。
彼も芳念と同じような手触りで真梨子の乳房に触れていた。
真梨子の大きな乳房を下から揉み上げるように
その手が寝ている真梨子の乳房の頂点にくると、乳首は手の平で撫でられる。
それを繰り返していると真梨子の喘ぎは更に深まってくる。
真梨子の乳首は固くなり、彼女が感じていることを物語っていた。
もう真梨子は石のように寝ているだけの女ではなかった。
二人の男に全身を愛撫され、その身体は波打っていた。
ゆっくりと、その白い女体は艶めかしく蠢き始めていた。
その時、芳念の指が真梨子のクリトリスに触れたとき、真梨子は声を出した。
「あっ、気持ちが良いです」
生まれて初めて言ったこの言葉。
この言葉を言いたかった、それも男性の前で言いたかった。
自分はようやく本当の女になった気がしたのである。
芳念の手と指は、
そんな真梨子の心を読むように次第に彼女を快楽の道へと誘っていた。
その日から真梨子は本当の女として生きていく希望を持った。
彼女のその顔は晴れ晴れとしていた。
母を許し、自分が女として生まれ変わったとき、真梨子は思った。
(今度、しばらく会っていない年老いた母に会いに行こう。)
そして、本当の母娘として色々なことを話したい。
私が心から感じる女になったことを・・
心から素直に伝えたい。
(完)