愛のレッスン《続編》-1
奈美を愛すれば、愛するほど、俺の中で不安は募り、疑惑が強くなってくる。
彼女の心の裏側まで知りたい。と思う俺は、間違っているのだろうか。
俺は奈美を愛しているし、奈美も俺のことを愛してくれている…たぶん。
しかし、身体はどうなのだろうか。奈美は俺のセックスに本当に心の底から満足しているのだろうか?
あの日、友人、今岡の俺よりもはるかに大きく猛々しいイチモツを、息を飲んで見つめていた奈美の虚ろな瞳…、口を開けて喉を震わせていた表情が、今も俺の脳裏から離れない。
もしかしたら、奈美の身体にはもっと違ったものが必要なのではないか?
俺よりも力強い、その身を焦がすような…。
愛するが故、彼女には全てにおいて満たせてあげたい。
心も、そして身体も…。
そう思っている俺は、おかしいのだろうか?
………
「なるほどね…」
無二の友人、今岡にそんな気持ちを打ち明けると、今岡は、しばらく考え込んだ。
窓越しから通りがよく見える。バーのカウンター。
外と中、どちらが観客にもなりうる奇妙なその場所で、俺と今岡は並んで座っていた。
今岡は煙草に火を付け、上を見ながらゆっくりと煙を吐いた。
そして、
「彼女を俺に抱かせる勇気はあるか?」
と、呟いた。
「え?」
俺は、その言葉に驚き、今岡の横顔を食い入る様に見つる。
「彼女の愛を確かめる方法が、ひとつある…。
お前、俺に彼女を抱かせられるか?」
「そ、それは…」
俺は自分のグラスに視線を下ろす。
「もし、彼女の愛が本当に知りたいなら、そうして貰いたいな…。お前は心も身体も彼女を独占したいんだろ?」
今岡は、俺を横目でチラリと見て、こう続けた。
「危険な賭けでは、あるけどな…。もしかしたら、これでお前達の愛は終わってしまうかも知れないぜ」
俺はグラスを一気に空け、テーブルに置き、両手で握り締めた。
俺のその手が微かに震えているのを今岡は見つめていた。
…………
数日後、俺は奈美を連れてラブホテルに入った。
部屋に入ると、俺はすぐに奈美を抱き締め、くちびるを重ねた。
手を胸に当て、ゆっくりと揉みしだく。
キスはやがて、激しくなり、舌を絡ませお互いの唾液を吸い合う様になっていく。
気持ちが昂ぶるに従って、息づかいも早くなる。
奈美の身体を抱えて、そのまま、ベットに押し倒そうとする。
「待って、シャワーを浴びさせて」
と、奈美が言う。
「いいよ、じゃ先に入って、俺もすぐいくから」
「うん…」
彼女が俺を見つめながら、
「早くね」
と、言ってバスルームに消える。
それを見届けてから、俺は、立ち上がり、ゆっくりと、出入口のドアに迎った。
シャワーの弾ける音が聞こえてくる。
俺は鍵をあけてドアを開く、
そこには今岡が、立っていた。
奈美は、シャワーを浴びながら鼻歌を歌っている。
(彼ったら、ホテルに誘ってくれるなんて、いったいどうしちゃったのかしら)
奈美はそんなことを思いながらも、これから始まる幸せな行為の予感に、胸をときめかせ、念入りに身体を洗っていく。
彼が服を脱ぐ気配が、判る。
そして、バスルームのドアが開かれる。
そこに立っている男が、自分の彼ではないことを知るのに、ほとんど時間はかからない。
彼女の悲鳴が、シャワールームから反響して、部屋中に響く。
「愛する彼じゃなくて、悪かったな!」
「今岡さん!何でここに?」
両手を握られ壁に押しつけられた奈美は、まったくこの事態が把握出来ない。
裸の身体と身体が数センチの所にあり、羞恥心が込み上げてくる
「あいつに頼まれたんだよ。あんたを犯してやってくれって!」
「そんな!?」
「あんたに本当の絶頂を味わせてやりたいんだとさ」
「うそよ!彼がそんなこと言うはずないわ!」
「よく考えて見ろよ、そうじゃなきゃ、俺がこの中に入れる訳ないじゃないか」
(信じられない)
奈美は焦った。色々な考えが頭の中を駆け巡る。
彼が私との行為を終える度、いつも「すまない」と誤っていたこと、そんなことないのに、だって、彼はいつも私をちゃんといかせてくれるし、それに、私は彼と繋がっているだけで充分幸せなのに…、優しくて、いつも私を大切にしてくれて、まっすぐな彼のこと、こんなに愛しているのに。
それより、この非常事態をなんとか打開しなくては。