投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

「カオル」
【その他 その他小説】

「カオル」の最初へ 「カオル」 28 「カオル」 30 「カオル」の最後へ

カオルC-6

 元々、平日までバレーを習わせるつもりはなかった。だから、座間や直樹の母親に誘われた時も保留にしていた。
 しかし、須美江は昨夜、娘の部屋で何が行なわれたのかを、知ってしまった。
 2人が自室に消えて1時間ほど経った頃、部屋の中から漏れ聞こえた声に、胸をかきむしる思いがした。

(早く何とかしないと、2人共、おかしくなってしまう)

 そう考えた須美江は、平日の練習参加を決めたのだ。

(とにかく、薫をバレーにのめり込ませないと…)

 母親としての、悲痛な願いだった。





 薫が、練習の支度をしている頃、真由美は下足場を出たところだった。

(何だか、嫌な1日だった…)

 登校前の出来事から始まったマイナス感は、学校でも消えることなく真由美を落ち込ませた。
 そんな日に限って、授業中にミスを犯す。注意力が足りないと怒られたのは、今日だけで3回もあった。
 全ては、己の未熟さ故にと解っているが、認めたくなかった。

(これで、家に帰ったら、また言われるんだろうな…)

 そう考えると、無意識に足取りも重くなる。

「真由美ぃー!」

 そんな真由美を呼び止めたのは、ひとみだ。

「足早いから、追いつくの大変だったよ」
「何しに来たのよ」

 フランクに話しかけるひとみに対して、真由美は敵愾心むき出しの言葉遣いだ。

「えらい言われようね?」
「当りまえでしょう!変なこと訊いてきたくせに」
「変なことって、人に言えないこと?」

 からかうような口ぶりに、真由美は耳まで赤くなる。それを見たひとみは、またクスクスと笑った。

「もういい!さよなら!」
「ちょ、ちょっと待ってよ!」

 駆けだそうとした真由美を、ひとみは慌てて引き止める。どうやら、やり過ぎたようだ。

「ごめんって!悪かった」
「人を小バカにして!あんたの神経疑うわ」
「悪かったって!このとおり」

 両手を合わせて必死に謝るひとみ。姉がいて大人びた言動をみせるが、心の余裕を失うと地の15歳が顔を出す。
 そんな友人を見た真由美は、怒りを半端なまましまい込んだ。

「今度あんなこと言ったら、終わらせるからね!」
「わかってるって!」

 どうやら、収まったようだ。

「それよりもさ、今日は暇でしょう?」
「あんた…懲りてないみたいね」
「そうじゃなくて、塾もないでしょう」

 ひとみの言う通り、塾は昨日まで合宿だったので休みだった。


「カオル」の最初へ 「カオル」 28 「カオル」 30 「カオル」の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前