カオルC-3
(そんな…)
結局、昂ってしまった頭を、自分で鎮めて寝入ったのは、未明になった頃だった。
(何で…あんなこと)
それらが、薫の顔を見た途端に甦り、激しい自己嫌悪が湧き上がった。
感情をコントロール出来なくなり、つい怒鳴り散らしてしまった。
(後で謝らなくちゃ)
真由美は、階下へと降りていった。
階段下にある玄関には、出かける晋也と薫に、それを見送る須美江の姿があった。
「遅いわよ」
須美江がちらりと見た。声音が怒っている。
だが、真由美は素直になれない。
「だって…起こしてくれるのが遅いんだもん」
自分勝手さが口をついた。
「ごめんなさい、僕が遅れちゃったばっかりに…」
姉にすまないという気持ちが働いたのだろう。薫の方が項垂れてしまった。
須美江は、真由美の態度をたしなめる。
「中学生にもなって、人に頼るんじゃないの」
「こっちは夜遅くまで受験勉強に費やしてんのよ!そのくらいのフォロー、してくれてもいいじゃない」
お互いの感情が、段々、熱を帯びてきた時、
「もう、そのへんにしとけ」
黙って見ていた晋也が、ついに割って入った。
「その問題は今夜でもいいだろ。それより、さっさと支度にかかりなさい」
父親からの厳しい意見。真由美は、言い返す言葉を失った。
「分かってるよ、そんなこと」
そう言い残すと、洗面所に逃げ込んでしまった。
そんな姿に、須美江はため息をついた。
「何、朝からツンケンしてんのかしら?」
「気にするな。色々あるんだろう」
晋也はそう答えると、薫の頭に手を置いた。
「おまえもだ薫。姉ちゃんと仲良くな」
「うん」
「じゃあ、行こう」
「いってらっしゃい。気をつけて」
須美江に見送られて、2人は自家を後にした。
同じ頃、真由美は洗面の最中だった。