投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

「カオル」
【その他 その他小説】

「カオル」の最初へ 「カオル」 24 「カオル」 26 「カオル」の最後へ

カオルC-2

「こんなに…」
「これで、ウィッグを着ければ完璧な女の子よ」

 頬を寄せて弟を見つめる真由美。その口から吐息が漏れた。

「んっ」

 姉の口唇が、押しつけるように重なる。受けとめた薫は、この行為を求める意味が解らない。

 重なりが解かれた。

「薫…」

 薫の目に映った姉の目は潤んでいた。最初に思い浮かんだのは綺麗だということ。
 しかし、何故、そうなのかも解らない。

「お姉ちゃん」

 思いが口をついた。

「なんで、ボクにキスするの?」

 やや、硬い面持ちで問いかける弟に、真由美は笑みを返した。

「わたしにも、解んないや」

 そう答えると、再び、弟の身体を抱しめた。





 翌朝。

「お姉ちゃん、起きてよ」

 薫は、真由美の部屋にいた。
 なかなか、目を覚まそうとしない姉の身体を揺すっている。

「うん…ん」
「早く起きてよ」

 いつもは、先に起きてるはずが、今朝に限って起きてこないのが心配になったのだ。

「あ…うん?」
「やっと起きた」
「…今、何時?」
「もうすぐ、7時半だよ」

 状況を聞いた真由美は、目を見開いた。ベッドを跳ね起きた。

「な、何でもっと早く起こしてくれなかったのよ!」
「だって…」
「完全に遅刻じゃない!」
「ごめんなさい」

 怒りをぶつけられて、薫は俯いてしょげ返る。見当違いと思うのだが、言葉が出ない。

「着替えるから出てって」
「う…うん」
「早く!」

 半ば、追い出されるように部屋を出た。

「まったく…」

 誰もいなくなった部屋で、真由美は憂鬱な顔になった。

(薫のおかげで遅刻だ…)

 昨夜のことが、頭にこびりついて剥がれない。

 弟の“望み”を叶えてやった後、眠ろうとベッドに入った。
 目をつぶった。余韻ただよう仄暗い部屋。網膜が、鼻腔が、口唇が、指先が、美麗な弟の姿を再び呼び覚ます。

「…う…うん」

 何度も寝返りを打つ真由美。だが、昂りは収まるどころか、どんどん、どんどん増していった。


「カオル」の最初へ 「カオル」 24 「カオル」 26 「カオル」の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前