白い世界-2
「いや……まさか、あの時倒したはず……」
アースは片手で顔を覆って記憶を辿る。
『?何故、私の名前を?』
「って、やっぱザギかい!!」
不思議な表情を見せるザギに、驚きのあまり思わずビシッと突っ込むアース。
『ああ……久しぶりではないか、生き延びたか魔導師よ』
アースの突っ込みに返事をしたのはもう1つの頭だった。
『前に話したであろう?西の大陸の魔導師と召喚師の卵にやられたと……』
『ああ……君がそうなのかい?偶然だね』
『……キャラ……まさかお主が姫だったとはな』
「待て待て!なんで生きてんだよっ!?」
勝手に会話をする2つの頭に、キャラを押し退けたアースが聞く。
『いや。死んだとも、綺麗さっぱりな。しかし、本体はこっちでな……こっちが無事なら何も問題は無いのだ』
本体から切り離すと精霊レベルにまで力は落ちるが、魔力を集めるのには都合がいい。
たまたま出会った魔力の合うスネークの男についていたのだが、まさかそこで殺されるとは思っていなかった、とスネークのザギは笑う。
『あの時お主が魔獣ハーフと気づいたが、直ぐに喰い破られると思っておった……どうやって生き延びた?』
「教えるかよ、馬ー鹿」
強気で答えるアースだが背筋に冷たい汗が流れるのを感じた。
あの時とは桁違いの圧力を感じるのだ。
『……ふむ……キャラは使える……』
アースの答えなど端から期待していないスネークのザギが声をかけると、両脇に控えていた蜘蛛から白い刃が吹き出した。
「!ぐあっ!!」
白い刃はアースの腹を突き抜け、後ろに居たキャラに巻き付く。
「……なんつってな……そう、何度もやられるかよっ!」
腹を刺されているはずのアースがニヤリと笑った瞬間、2人の姿は煙のように掻き消え、周りの集団も次々と同じ様に消えた。
『!!幻影かっ』
あらかじめ設置しておいた魔法陣で姿を投影していたのだ。
『進め!!邪魔するものは薙ぎ倒せ!!』
ザギの言葉に魔物達は岸壁を登り始める。
『邪魔はさせない』
ザギは蜘蛛に糸を吐かせ、岸壁に張り付かせると頑丈な糸をたどってファン上陸を始めた。