白い世界-17
「オーウェン!!」
木々をなぎ倒して地面にめり込んだオーウェンにキャラは駆け寄ろうと踏み出す。
「待て!!アビィとザック……ついでに親父に魔力分けてやってくれっ」
アースはキャラを引き止めて結界を解除した。
「了解」
キャラは焦る気持ちを落ち着かせ、アビィとザックに魔力を分けるとベルリアの元に行く。
「大丈夫ですか?」
「はっ……大丈夫じゃないよ……」
地面に座り込んだベルリアは肩で息をしながらキャラに答えた。
自分は補強しただけでこの有り様なのに、あれだけ広い範囲に結界を張ったアース自身はケロッとしている。
義理とはいえ自分の息子の底知れぬ力に少しむかつく。
「魔力分けますよ?」
「すまない、頼む」
キャラはベルリアに顔を寄せて自分から唇を重ねた。
長年アースの魔力を吸い続けただけあり、ベルリアは魔力の吸い方が上手い。
「っん……」
だからと言って吸われるキツさは変わらないのだが……。
「ん……良し。ありがとう、キャラ」
ベルリアは唇を離すと、軽くお礼のキスをして立ち上がる。
「おっし、キャラはオーウェンを頼む。俺とエンと親父はアビィでザギを追う。ドグとデレクシスは他の奴らと魔物殲滅に全力を注いでくれ!!」
アースの命令に全員が返事をしてそれぞれ散って行った。
「オーウェン、オーウェン!!」
地面に半分埋まったオーウェンに魔力を注ぎながらキャラは何度も名前を呼ぶ。
『……キャロライン……?』
「オーウェン!!」
金色の目を開けたオーウェンは、目の前にいるキャラを見て少し驚いた表情を見せる。
『キアルリアか……キャロラインの声に似ておった……』
オーウェンの言葉にキャラは首を傾げた。
キャロラインはキャラのミドルネームなのだ。
『お前のミドルネームは儂がつけた。キャロラインは儂のマスターの名じゃよ』
少し照れたように話すとオーウェンはゆっくりと体を起こした。
『ザギは?』
「アース達が追ってる」
『儂らも行くぞ』
オーウェンの言葉に頷いたキャラはその背中に飛び乗る。