白い世界-15
『貴様らっ』
ギリギリと険しい表情のザギは全身から雷を吹き出した。
バヂィィッ
「っい゛っ!」
「あ゛ぐぅっ!」
集中していて全く気づいていなかったベルリアとアースは見事に吹っ飛ばされる。
「アース!!」
「学長ぉっ!!」
エンは急いでアビィを向かわせるが間に合いそうにない。
「っ風陣!」
エンの口から呪文が紡ぎ出され、風が巻き起こるとベルリアとアースの体を受け止め、荒々しく地面に降ろした。
「っつ……丁寧に頼むよエン……」
「ごめんなさ〜い」
直ぐ横に降りてきたアビィに向かって、あまり体力には自信が無いベルリアが文句を言い、エンは小さくなって謝る。
「……エンさん……火系以外も使えたんですね……」
初めて見た、とキャラは驚いた。
「一応、魔法士ですからぁ〜一通り出来るよぉ〜」
これでも学校では一目置かれる存在なのだ。
「すまん!8割程度しか分解出来んかった。お前ら怪我は……」
駆け寄ってきたアースはキャラを見て目を見開く。
「な?!おまっ髪は?!」
「あ……切られた」
アースの剣幕に、キャラはアビィから降りながらしどろもどろに答えた。
「信っじらんねぇ!!クソが!!蛇か?!蜘蛛か?!」
「く……蜘蛛」
「って、蜘蛛潰れてんじゃねぇか!!」
怒りのやり場が無いアースは頭を抱えて吠える。
「ちょ……アース、それよりっ」
吠えている場合ではない……塊に取りついたザギはズブズブとその体を塊の中へと埋め込んでいたのだ。
「何する気だ?!」
それはかなり異常な光景だった……塊に埋まっていくと思われたザギの体に、逆に塊の方が吸収されていく。
ぬめったザギの鱗が内側から弾けて次々と剥がれ落ち、代わりに虹色に輝く鱗が盛り上がってきた。
2つの頭は1つに融合し、たてがみのような結晶が首の周りに突き出す。
たてがみは背骨を通って尻尾まで繋がっていった。
神々しいまでに輝く、その姿はまるで水晶で創られた龍……龍はブルッと体を震わせるとこびりついていたザギの残骸を振り落とす。