白い世界-10
「っひぁっ」
「って、どうしたのさ?!髪!!」
今頃気づいたエンは短くなったキャラの髪に驚いて声を荒げる。
「え……あ……蜘蛛に切られました……あれにやられると魔力吸われるんで気をつ……」
「信じられないっ!!女の子の髪切るなんてっ!ムカつくぅ!!」
キャラの話を聞き終わる前に、激怒したエンがアビィに指示を出した。
「焔舞!!」
『ケシャアァァ!!』
アビィの口から業火が吹き出して白い刃に直撃する。
刃は炎に弱かったらしく、次々に引火して全ての刃を燃やし尽くした。
「ざまあみろ!!」
『キュア!!』
ふんっと鼻息を吹いたエンとアビィにキャラはくすりと笑い、直ぐに表情を引き締める。
(頼むぞ……)
時間稼ぎの方もそろそろ限界を迎えてきた。
その頃、デレクシスとザックは城の上空まで来ていた……2匹の鳥型の魔物を引き連れて。
「国王!!デレクシス様の精霊が城の上空で魔物と対戦中です」
見張りに立っていた兵士が避難場所にいるラインハルトに報告する。
避難場所は最北の洞窟から運ばれてくる怪我人でごった返していた。
「儂が行こう。オーウェン殿、頼めるか?」
『うむ』
ゼビア国王が名乗り出、オーウェンが獣型に姿を変える。
「ゼビア国王、お年を考えて……わたくしの仕事をこれ以上増やさないで下さいませね」
止めないけど無茶はするな、と遠回しに言うイズミにゼビア国王は苦笑した。
「最近の姫は可愛くねぇなぁ……」
キャラにしろイズミにしろひねくれすぎだ、とゼビア国王は呟く。
「素直な時もありますわよ?」
「ぜひ、見てぇもんだな」
簡単に会話を終わらせたゼビア国王は、オーウェンに跨がって空へと飛び立った。
イズミはその背中を祈るように見送る。
「デレク!!」
「ゼビア国王!」
応援に来たゼビア国王とオーウェンを見たデレクシスは心底ホッとした。
ザックとは意識の共有しか出来ないので逃げ回るだけだったのだ。