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天使に似たるものは何か
【SF その他小説】

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天使に似たるものは何か-11

 数刻後、機能が回復し始めたミシェルをエインセルの元へ残し、マクグーハンとロビンは雨上がりの墓地を散策していた。足下に泥濘は残るものの、水たまりには七色の虹が映り込んでいる。
「ミシェルをあのまま残してきて良かったんですか?」
「僕にも分からないけど、多分大丈夫な気がする…」
 苦笑するマクグーハンに、ロビンは呆れた顔を見せた。
「なんて無責任な…」
「そう言わないでくれよ。こんな事は僕だって初めてなんだ。それに、二人が話をすればするほど、お互いの違いを認識するんじゃないか、と思ってね」
「それはつまり、心配はないと言うことなんですね」
「君は白黒をはっきりしないと気が済まないタイプなのかい?言葉を曖昧にしておく美学もあるんだがね…」
「それはつまり、タダのごまかしの逃げ口上なんじゃありません?」
 大袈裟に肩をすくめてみせるマクグーハン。
「あまり苛めないでくれよ…」
 R・ロビンはマクグーハンの戯けた様子に鈴のような笑みをこぼすが、ふと何かを思い、空を見上げた。訝しげにロビンの顔を覗き込むマクグーハン。
「…あの子を何とかしてやりたい一心で此処まで来ましたけれど、これからあの子にはオークションが待っているんですよね。それを思うと、果たしてあの子を治療して良かったのかどうか………」
「自分が幸せかどうかなんて、その人本人にしか分からないことさ。それに、君はどうなんだい?自分が今まで生きてきて、不幸だったと思っているのかい?」
「そうですね、私は辛いことも多く経験してきたと思います。何より、親しい人達を常に見送らなくてはならない自分が嫌になることもあります。それで、自分が不幸だろうかと考えると…」
 ロビンは其処まで言うと言葉の途中で口を閉じた。
「…考えると?」
「………いつか教えて差し上げますわ」
 そう言って微笑みを向けるロビンの姿は、天使にも似て見えた。

終わり。


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