君のいる景色 -10
「……ごめ……なさい……」
やっと声をだしたキャラにアースはくすりと笑った。
「もう、怒ってねぇよ」
頭で考えるより先に手が出てしまったが、冷静に考えると理解できる。
「……生きてて……良かった……」
「おぅ、殺しても死なねぇよ」
「も……置いて……かない……で……」
(ああ……そうか……)
キャラが振り切れないのならアースが連れていけばいいのだ。
「今度、死にかける時は巻き添えにしてやるから……覚悟しとけ」
まだ死にかけるつもりか、とキャラは思わず吹き出した。
「やっと笑ったな」
アースはキャラの顎に手をかけて上を向かせる。
涙でぐちゃぐちゃなのは自覚しているが、開いてない右目に視線が釘付けになってしまった。
「あぁ、悪ぃ……右目はダメだったんだ……」
アースは大きく縦に切傷が入った瞼を指で押し上げて中身を見せる。
眼孔の中には無機質な水晶玉が入っていた。
「お気に入りだったのにな?」
アースは手を離して左目だけでキャラを見つめる。
キャラはアースの頬に手を添えて、少し伸び上がり右の瞼にキスを落とした。
「贅沢は言えない」
失ったのがこれだけで済んで良かったのだ。
「ああ……でもひとつ良い事がある」
「何?」
「精霊が見えるようになった」
アースはキャラから目を離して空を仰ぐ。
キャラもアースの視線を追って空に目を向けた。
木の周りには木の葉の羽を持つ蝶や、半透明の鹿、キラキラ光る空飛ぶ魚……幻想的な光景にため息が出る。
「……お前の見てる世界は……綺麗だな……」
ポツリと言ったアースの胸にキャラはこてんともたれ、手の平を上にあげた。
その手の平に透き通る蜻蛉の羽を持った小さい少女が降り立ち、優雅に礼をして見せる。
アースが手を差し出すと、少女はそちらに移りくるんと回って同じように礼をして、パタパタと空へ飛び立った。
視線をキャラに戻すと目が合い、2人はくすりと笑う。
「ふふ、ホントに見えてんだな」
同じ景色が見れて嬉しい、とキャラはアースに腕を回した。
「まぁな……あ、そういやミヤがここら辺に天然温泉が有るって言ってたんだが……行かねぇか?」
しっかり疲れをとって決戦の為に英気を養おう、と言うアースにキャラは顔をしかめる。