投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

ゼビア・ズ・ストーリー
【ファンタジー 官能小説】

ゼビア・ズ・ストーリーの最初へ ゼビア・ズ・ストーリー 246 ゼビア・ズ・ストーリー 248 ゼビア・ズ・ストーリーの最後へ

君のいる景色 -10

「……ごめ……なさい……」

 やっと声をだしたキャラにアースはくすりと笑った。

「もう、怒ってねぇよ」

 頭で考えるより先に手が出てしまったが、冷静に考えると理解できる。

「……生きてて……良かった……」

「おぅ、殺しても死なねぇよ」

「も……置いて……かない……で……」

(ああ……そうか……)

 キャラが振り切れないのならアースが連れていけばいいのだ。

「今度、死にかける時は巻き添えにしてやるから……覚悟しとけ」

 まだ死にかけるつもりか、とキャラは思わず吹き出した。

「やっと笑ったな」

 アースはキャラの顎に手をかけて上を向かせる。
 涙でぐちゃぐちゃなのは自覚しているが、開いてない右目に視線が釘付けになってしまった。

「あぁ、悪ぃ……右目はダメだったんだ……」

 アースは大きく縦に切傷が入った瞼を指で押し上げて中身を見せる。
 眼孔の中には無機質な水晶玉が入っていた。

「お気に入りだったのにな?」

 アースは手を離して左目だけでキャラを見つめる。
 キャラはアースの頬に手を添えて、少し伸び上がり右の瞼にキスを落とした。

「贅沢は言えない」

 失ったのがこれだけで済んで良かったのだ。

「ああ……でもひとつ良い事がある」

「何?」

「精霊が見えるようになった」

 アースはキャラから目を離して空を仰ぐ。
 キャラもアースの視線を追って空に目を向けた。
 木の周りには木の葉の羽を持つ蝶や、半透明の鹿、キラキラ光る空飛ぶ魚……幻想的な光景にため息が出る。

「……お前の見てる世界は……綺麗だな……」

 ポツリと言ったアースの胸にキャラはこてんともたれ、手の平を上にあげた。
 その手の平に透き通る蜻蛉の羽を持った小さい少女が降り立ち、優雅に礼をして見せる。
 アースが手を差し出すと、少女はそちらに移りくるんと回って同じように礼をして、パタパタと空へ飛び立った。
 視線をキャラに戻すと目が合い、2人はくすりと笑う。

「ふふ、ホントに見えてんだな」

 同じ景色が見れて嬉しい、とキャラはアースに腕を回した。

「まぁな……あ、そういやミヤがここら辺に天然温泉が有るって言ってたんだが……行かねぇか?」

 しっかり疲れをとって決戦の為に英気を養おう、と言うアースにキャラは顔をしかめる。


ゼビア・ズ・ストーリーの最初へ ゼビア・ズ・ストーリー 246 ゼビア・ズ・ストーリー 248 ゼビア・ズ・ストーリーの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前