異界幻想ゼヴ・ヒリャルロアド-33
「あっ、あっ、あっ……!」
強い快感に深花は首を左右に振るが、腰の淫らな動きは止まらない。
「はぅ、あうぅ……!」
引き攣るような激しい締め付けは、三度目の限界を男に知らせる。
腰を落とした瞬間、か細い悲鳴を上げながら深花は全身をのけ反らせた。
「っく……!」
最高の快感とともに、肉棒がはち切れる。
子宮に向けて噴き上がる白濁液を感じ、深花は声を漏らした。
全てを搾り取ってから、彼女は下腹部を撫でた。
薄く笑うと身を屈め、男の唇を求める。
それに応えてたっぷりキスを施しながら、ジュリアスは用を成し遂げた一物を引きずり出した。
「んっ……!」
声にやや不満が混じっているように聞こえるのは、単なる気のせいか。
「あふぅ……」
しばらくキスを貪ると満足したようで、深花は横になって汗ばんだ肢体を男に寄り添わせる。
寄り添った深花の呼吸がやがて、寝息に変化した。
久しぶりでもあり初めてでもある関係は、大満足で終了したと言っていい。
ご本人が寝入ってしまったので今日の所は仕方ないが……懲罰としてのそれは明日以降、きっちり心と体に刻み付けてやろうと思う。
二度と、血迷って馬鹿げた真似をしないように。
翌朝。
ごくりと唾を飲み込んで、小間使いは寝室のドアをノックした。
「失礼します。お坊ちゃま、朝食をお持ちしました」
中からけだるい声で、応答がある。
「そこらへんに置いとけ〜」
「か、かしこまりました……」
ドアが当たらない位置へワゴンを置き、小間使いは退出する。
居間を出る前に振り返れば寝室から逞しい腕が出てきて、ワゴンを寝室に引きずり込む所だった。
作りたてのバターとジャムが添えられた、焼きたてのパン。
少し焦げ目がつくくらいに焼かれたソーセージを付け合わせにしたチーズ入りのオムレツ。
ぷんとくる匂いは、蜂蜜で甘みをつけたミルクティーだろう。
後は温野菜のサラダと、食べやすいよう一口分にカットされたフルーツが盛られた皿。
食事が冷めないように掛けられた薄いカバーの上からそれらを見てとったジュリアスは、ごくりと喉を鳴らした。
思い返せば夕食前に深花の出奔を知り、探して連れ戻してベッドの中であれやこれやを済ませて就寝するまで、水の一滴も口にしていないのだ。
腹も減れば喉が渇くのも道理である。
「ん……?」
朝食の匂いに気づいたか、すやすや眠っていた深花が声を漏らした。
さすがに素っ裸で眠らせるのは行儀が悪いので、寝間着は着せてある。
それが地肌がほんのり透けるシースルーのネグリジェなのは、単にジュリアスのスケベ心を汲んで深花が用意したのがそういう系統の寝間着だったからだ。
「目ぇ覚めたな?」
枕元までワゴンを押し、食事の匂いを深花に届けてやる。
「んー……」
伸びをした深花は、あくびをしながら起き上がった。
「ベッドで朝飯が食えるのは金持ちの特権ってな。冷めないうちに食っちまおう」
カップにたっぷりのミルクティーを注いで鼻先に突き付けると、深花はカップを受け取って口をつけた。
「……ん」
朝の目覚めに嬉しい甘めのミルクティーに、彼女の頬が緩んだ。
ジュリアスはベッドの縁に腰掛け、自分の分のミルクティーを一息に飲み干す。