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異界幻想
【ファンタジー 官能小説】

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異界幻想ゼヴ・ヒリャルロアド-34

 裏の畜舎で飼われている牛から搾った新鮮この上ないミルクを使ったミルクティーが、喉を潤しながら胃まで落ちていった。
 夕食抜きで激しく体力を消耗した二人は、ボリュームのある朝食をあっという間に平らげてしまった。
「今日はどうするの?」
 ベッドから降りつつ、深花は尋ねた。
「私はメナファさんの所に騒いだお詫びを……」
「それも話し合いも今日の所はいい」
 空のワゴンをドアの外に押し出しながら、ジュリアスは深花の言葉を遮る。
「少なくとも今日一日、部屋から出られないと思え」
「……え?」
 なにやら不吉さを感じる語調に、深花はジュリアスの顔をまじまじと見つめる。
 食事中は平静そうに見えたが……たぎる怒りがマグマのように全身を駆け巡っているのが窺えた。
「じっくり教えてやるよ。今後、俺の傍から逃げ出すなんて馬鹿げた真似をしたらどうなるのかをな」


「兄上が戻ってこられた!?」
 小間使いからそう聞いたエルヴァースは、制止の声も聞かずに駆け出していた。
 本当に、兄があそこまであの女に執着する理由が分からない。
 あの程度の女、いくらでも代わりはいるだろうに。
 自分が追い出したと知った後、顔色を変えて捜しに出たが……よく見つけたものだ。
「兄う……!」
 ジュリアスの私室に飛び込んだエルヴァースは、寝室から漏れ聞こえる声に足を止めた。
「あうぅ……あっ、そこっ……んんうっ!」
「ここか?そうか、ここもイイか」
「あああああぁ……!!」
「おいおい……もう何度目だ?イきすぎだろ……こっちは全然足りてねえんだ、今度はこっちを満足させてもらわねえとな」
「ご、ごめんなさ……」
「舐めろ。俺がイクまでな」
 あまりにも生々しい睦言の数々に、エルヴァースは腰を抜かす。
「んっ……ん……」
「そうだ、吸ってくれ……」
 会話からして、あの女が兄の一物を咥えているらしい。
 他人様の行為など聞きたくないのに腰が抜けてしまって立ち上がる事もできず、寝室に向けて声を上げて助けを求めるなんて恥な真似もできなかった。
 せめて耳を塞げばよかったのだろうが、いきなり睦言を聞かされてパニックを起こした頭では、残念ながらそれを考えつかなかった。
「苦かろうが何だろうが、今日は飲め……飲み干せ」
「うぐ……!」
「昨日は腹の中まで俺のものにした。今日は、胃の中まで俺のものだ……さぁ、また腹の奥まで穢してやる。身も心も俺のものだって、全身に刻んでやる……だから、もう俺の傍から逃げ出そうなんて思うな……お前が不安なら、何度でも証を打ち立ててやる。誓ってやる。だから……!」
 女の派手な嬌声からして兄の言葉が耳に入っているとは思えなかったが、それは間違いなく女に向けられた愛の囁きだ。
 兄はそこまで、この女に入れ込んでいるのだ。
「もう、十分でございましょう?」
 背後から聞こえたリュクティスの声に、エルヴァースははっとする。
「義兄上様は、お姉様をあれほど愛してらっしゃるのです。これ以上邪魔をされるなら、弟であるあなた様を敵と認定しかねないほどに」
 リュクティスは連れてきた小間使いと一緒に、エルヴァースを抱き起こす。
「義兄上様から敵と認定されるのは、あなた様の本意ではないはず。あなた様は義兄上様の助けとなる事を望んでおられたのですから」
 部屋からエルヴァースを引きずり出しながら、リュクティスは諭す。
「わたくしは、あなた様を支えるために結婚いたしました。だから、あなた様が義兄上様から排除されるのは見ていられませぬ」



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