『兵士の記録〜エリック・マーディアス〜第三部』-1
今までのあらすじ
“滅びの風”と呼ばれる災害によって人類の大半が死滅した世界。
人々はその日から暦を変後暦とした。
そしてその中で作業をする為に人類は『ワーカー』という七メートル程の作業用二足歩行ロボットを開発し、再び復興を遂げる。
その中で再び国が出来、各国は小競り合いを始める。
そして滅びの風が止んだ時。ワーカーは復興の手段から戦争の道具へと変わった。
幾度もの争いの末、超大国『ゼニオン』の圧力により世界は安定するが、それすらも一時のものでしかなかった。
変後暦四二〇年、ゼニオンの崩壊により圧力が無くなった西の大国『ナビア』は、自国から独立して誕生した『ジュマリア』を制圧しようと戦争を開始する。
しかしジュマリアの誇る高い技術力、そして『雷神』と呼ばれる超人的なパイロットの活躍により、ナビアは劣勢に立たされる。
四二一年ナビア軍勢は雷神を撃破。しかし雷神の後を継ぐ『風神』により、戦況をもりかえすには至らなかった。(士気の低下を防ぐために、雷神撃破の事実はナビア内には隠蔽)
とは言ってもジュマリアにもそこまでの余力は無く、戦争は膠着状態に。
そして四二三年。
平凡な一兵士であるエリック・マーディアスは、初出撃の日に、風神と遭遇する。
しかも不測の事態によって、二人の機体は地下の遺跡都市へと落ちてしまう。
そこでエリックは、風神である女兵士、クリスと協力して脱出する事となる。
幾多の局面で圧倒的な能力を発揮するクリスに助けられ、自分の無力さを憂いつつも、エリックは彼女に惹かれていく。
またクリスも、死んだと思われるかつての幼馴染であり今なおも慕う思い人・エルに似ているエリックに興味をひかれ、二人は敵同士でありながら、急速に惹かれ合う。
やがて脱出に成功するエリックとクリス。
その時エリックはクリスへの思いを吐露し、クリスも条件付きでそれを受諾する。
クリスが出した条件、それは戦争が終わった時、彼女の思い人であるエル……雷神を超えるというものであった。
そして六ヶ月。基地のエースとなるまでに成長したエリックは、新型機のデータ取りの為基地に新しく編入された記憶喪失の青年アルファと、その保護観察役であるアリシアと出会う。ある日。アルファと親しくなる中で、戦闘が起こった。
その中で、エリックはアルファの駆る新型機『アーゼン』とその圧倒的な力を目の当たりにする。
そして戦闘後、アルファが心を読んで戦っているという事を知り、アリシアがアルファの過去を知っていると判明する。エリックは得体の知れない恐怖から、アリシアの独白を拒否し、聞かない事を選択。その直ぐ後で、新型ワーカーとパイロットの偵察と破壊の為に単身潜入したクリスと再会する。
クリスは潜入中の食料を名目にエリックと接触しながら、新型機とそのパイロットであるアルファについての調査を進めていた。しかしアルファはエリックと接触しているにも関わらず、見事にすれ違って出会うことの無い日が続く。
しかし遂に二人は出会う日を迎える。
何故か取り乱し、心神喪失状態のままワーカーを奪って基地を離れようとするクリス。
それを追おうとするエリックは、クリスとの内通が発覚して捕まりそうになってしまう。
そこを訓練学校以来の友人であるミーシャに救われ、彼は何とか基地の脱出に成功する。
やがてクリスを追う追撃隊を倒し、エリックはクリスと向かい合う事になる。
だが錯乱状態のクリスはエリックに向かって攻撃を仕掛けるが、エリックは辛くもこれを撃退し、クリスに正気を取り戻させる事に成功する。
その最中に行われたエリックの告白に心動かされ、クリスはエリックに心を寄せるようになった。
そしてクリスは突然、国を捨てて北方の宗教大国ルゥンサイトに行く事を提案。
エリックは細かい事を聞くことはせず、クリスと共に在る事を選択し、彼女の提案に同意したのだった。