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『兵士の記録〜エリック・マーディアス〜』
【SF その他小説】

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『兵士の記録〜エリック・マーディアス〜第三部』-50

自分は何をしているのか。何をしたいのか。エリック自身にも、もう判らなかった。
ルゥンサイトの一件で、過去から逃げるのは止めた。心の穴にも、耐えられる筈だった。
このレイヴァリーで、未来を見つめられるようになると思っていた。
あとは、アルファを倒す事を目標に生きていけると、自分に言い聞かせた。
なのに。
「……………………」
 つくづく自分の弱さに嫌気がさし、エリックはそのまま押し黙る。
「訂正する」
 突然、X2が口を開いた。
「南ゲート方向のセンサーが、戦闘を感知。指令を受け南ゲート周辺を巡回中、資料から顔と名前を知っていたお前を発見。それが最初だ」
 淡々と淀みなく、X2は答える。どうやら、先ほどのエリックの言葉に対してらしい。
そういえば、此処に連れてこられる前に名前を呼ばれた気がする。
「ああ、そうか……世話になったな」
 いきなり話し出したX2の意図がわからず、エリックは困惑していた。
「別に」
 だがX2はそんなエリックの思惑に関係なく、そう言ったきり、再び黙ってしまう。
「……………」
 再び流れる沈黙。いつの間にか、カップの中身は残り少なくなっていた。
ぐいっと一口で、エリックはカップの中身を流し込む。
「…もうそろそろ、俺は行くから」
 エリックとX2の間に置いてあるトレイに、中身の無くなったカップを載せる。
そして、そのまま休憩所を離れようと、エリックは立ち上がった。
「……」
 X2が、ぴくっとエリックの方を見上げた。
と、その瞬間。けたたましいサイレンの音が、研究所内に鳴り響く。
『警戒。警戒。ナビア軍に動きあり。非戦闘員は直ちに避難し、戦闘員は速やかに所定の位置に着け。繰り返す……』
 サイレンに続いて響き渡るアナウンス。
X2は、即座に反応して風のように飛んで行く。恐らくは、自分の持ち場に。
エリックも、事前の打ち合わせどおり隊長に指示を仰ぐ為、簡易司令室へと走り出した。
普通なら事前に持ち場を決めておくものなのだが、はっきり言って主要な防衛箇所はH・Sや、元正規ジュマリア軍が固める事になっており、傭兵はまるで遊撃隊のようである。
防衛戦で遊撃隊という言い方も妙な話だが、臨機応変に増援としてかけつける予定だ。
といっても、あまり期待されてもいないらしいのだが。
「……ちっ」
 走りながら、エリックは舌打ちを一つ。
今はベルゼビュールも整備中、エリックの体調も、決してベストとは言えない。
自分の出る幕が無ければいいのだが、どうも嫌な予感がした。
そんな予感を振りはらうように、エリックは走る。答えは何れ判る事だ。


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