投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

『兵士の記録〜エリック・マーディアス〜』
【SF その他小説】

『兵士の記録〜エリック・マーディアス〜』の最初へ 『兵士の記録〜エリック・マーディアス〜』 104 『兵士の記録〜エリック・マーディアス〜』 106 『兵士の記録〜エリック・マーディアス〜』の最後へ

『兵士の記録〜エリック・マーディアス〜第三部』-51

第十八話 《変後暦四一四年二月二二日》

 簡易司令室に駆け込んだエリックは、すぐに中央デスクに居た隊長を発見する。
正面の壁に設置されたモニターと、デスクにひかれた地図を比べて見ている。
部屋には他にも、小型端末を開いているオペレーター、軍人らしき者達などが居た。
カゲトラの姿は、見えない。恐らく研究室だろう。
「来たか」
 隊長は振り返って短く言うと、再びモニタに目を移した。
「隊長、俺達は…」
「今は、特に出番は無いそうだ。ローラとシヴは南ゲート付近、ヲルグとギザは北ゲート方面に行かせたがな」
 エリックの言葉も終わらぬ内に質問に答え、横壁のサブモニタを目で指す。
小分けにされたサブモニタには、レイヴァリーの監視カメラからの映像等が映っている。
その一つに、数本のナイフを手入れしているローラの姿。といっても、緊張感は無い。
ナイフの手入れは屋内戦を想定して一応、念の為という事だろう。ローラは銃火器を嫌い、ナイフを好んでいる。全く銃を使わないという訳でもないが、それがローラのスタイルだ。
「敵は……?」
 エリックは聞いたが、隊長はそれに答えず、ただ正面のモニタをにらみつけた。
そこに映っているのは、大まかな戦力分析図だ。上方を北として、青い光点でレイヴァリーの戦力が。赤い光点でナビアの戦力が示されていた。それを見れば、大まかな戦況は把握できる。そして右下隅には、中央棟屋上からの映像があった。
基地を中心に青い光点が点在し、その上方には、夥しい数の赤い光点。
もはや点の集まりではなく赤に埋められて、帯という様相である。
そして、それがじわりじわりと、下方へと移動している。
右下の映像が超望遠モードに変わり、小さくこちらへ迫るナビアの軍勢が映し出される。
ナビアカラーであるこげ茶の軍勢。前面には超重シールドが構えられている。
超重シールドとは、ワーカーより少し大きく、とても分厚いシールドである。
それはワーカー数体で押さなければ動かせない程重いが、殆ど全ての弾を無効化できる。
「敵、長距離砲の射程距離内に進軍」
 オペレーターの声が、静かに戦の始まりを告げた。


『兵士の記録〜エリック・マーディアス〜』の最初へ 『兵士の記録〜エリック・マーディアス〜』 104 『兵士の記録〜エリック・マーディアス〜』 106 『兵士の記録〜エリック・マーディアス〜』の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前