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『兵士の記録〜エリック・マーディアス〜』
【SF その他小説】

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『兵士の記録〜エリック・マーディアス〜第三部』-130

第五一話 《変後暦四二四年三月七日》


「……アリシア……?」
 意外な人物の乱入に、エリックはなんとか九死に一生を得られるかも知れないと、頭の中で考えを巡らせる。しかし兵士達は銃を下ろす事もなく、まだ状況は変わらない。
「此処で彼を殺すというなら、私は彼が抵抗していなかったと証言します」
 無抵抗の味方を射殺するというのは、一応軍規に触れる事である。つまり、アリシアは自分を助けに来てくれたという事らしい。
「……それとも、私も殺しますか?」
 相変わらずの淡々とした表情で、エリックと兵士の間に割って入りながらアリシアが問う。さすがに邪魔というだけで、アリシアを殺す訳にもいかないのだろう。兵士達は当惑した表情で顔を見合わせる。やがて頷き合うと。
「……判った、とりあえず上の判断を仰ごう」
 一応銃は構えたままで、兵士達が請け合った。どうにか命の危機は脱したらしいが、まだ安心するには早い。とりあえず器材持ち出しについては追求されるだろうし、これからの安全が保障されている訳ではないのだ。
「…………ふぅ……助かった…のか……」
 そこまで考えて、エリックはへたり込むように身を屈めた。
「大丈夫ですか?」
 安心して気が抜けたのだろうと、アリシアが駆け寄るようにして近づいてくる。予想通りのその動きに、エリックはちらりと兵士を確認した。銃口は、こちらに向いていない。
「待て、あまり近づくな!」
 エリックの視線に気付いたか、兵士の一人が鋭く制止の声をかける。
 しかし、それこそエリックの思うツボだった。
「……?」
 アリシアが、兵士の方を振り返る。
 瞬間。
「っ?」
 伸び上がるように立ち上がったエリックは、左手でアリシアの手を掴んで引き寄せる。右手は、素早く銃を抜いていた。


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