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『兵士の記録〜エリック・マーディアス〜』
【SF その他小説】

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『兵士の記録〜エリック・マーディアス〜第三部』-102

「…?」
 エリックが前方にトレーラーを認めたのは、追っ手も振り切ったかという所だった。
かなり前方、エリック達の居る通りが突き当るT字路。小さくトレーラーが見えたのだ。
そこまでは良いのだが……
「……またやっかいな事に……」
 思わず呻くエリック。前方に見えたトレーラーは敵の襲撃を受けているらしく、トレーラーのすぐ傍ではバフォールと一体のアーゼンが奮戦していたのだ。エリック達から観て右に伸びた通りに敵が居るのか、銃口をそちらに向けて発砲している。敵の中心に突っ込んで倒す戦い方ができないのは、トレーラーを護衛しているのがバフォールとアーゼン一体だからだろう。残る一体のアーゼンはどうしたのだろうか。
「くそ、此処まで来てトレーラーが破壊されたりしたら洒落にならんぞ…! 先に行くからなっ!!」
 一応連れてきたアーゼンに一声かけると。幸い発動させたままだったイオンブースターの推力を借りて、エリックはベルゼビュールを走らせる。シートに押し付けられるGの中で、エリックは様子をよく確認する。とその時、エリックの前方に無人機が降って来た。
どうやら通りを挟むビルの上から襲撃してきたらしい。ワーカーも落ち方が良ければ三十メートル程の落下に耐えられるが、無人機もそれと同等くらいには丈夫らしい。
(昔地下空間に落っこちた時は、土砂がクッション代わりになったからな……)
 ついそんな事を思い出すエリックだったが、そんな状況でもないので直ぐに意識を戦いへと引き戻す。ベルゼビュールに背を向けた状態の無人機は、ベルゼビュールに狙いを定めている。バフォールは……気付いていない。別方向からの敵に応戦している所為だろう。
アルファは、無人機相手には反応が鈍くなるらしい。
「……ち…っ!」
 エリックが注意を呼びかけようとした瞬間、バフォールがベルゼビュールの方を振り向いた。そして、それと同時に、無人機に気付く。だが、無人機の攻撃を避けようとする素振りは見せない。避ければ背後のトレーラーに被害が出る事を、瞬時に判断したのだろう。急いで銃を無人機に向けるも、最早狙いを定めている無人機相手には間に合いそうになく。もう一方のアーゼンは、そもそも別方向から現れた無人機に気付いて居ない。
「…喰らえっ!!」
スローに流れる時間を終わらせたのは、ベルゼビュールが引いたトリガーだった。マシンガンが吐き出した銃弾は過たず無人機を貫き、衝撃で倒れた無人機はそのまま沈黙する。バフォールは一瞬の後、何事も無かったかのように別方向に居る敵との交戦を再開する。
「………ふぅ…」
 それを見守るエリックはため息を一つ吐いて、はたと自分の行動に疑問を持った。何故アルファが助かってほっとするのは、どうなのだろうかと。
だが深く考えている場合でもないので、直ぐにトレーラーの援護に回る。
トレーラーに追いついて見れば、バフォールが向かっている方向からは次々と敵が出現している。キリなしに増えてくるパターンだ。アーゼンがマガジンを交換し、その間をバフォールが埋める。間断なく撃ち続けなければならない為、攻めに回れないようだ。


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