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『兵士の記録〜エリック・マーディアス〜』
【SF その他小説】

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『兵士の記録〜エリック・マーディアス〜第三部』-103

「くそっ、どうして振り切って逃げない!?」
 非難するように通信で呼びかけながら、エリックはバフォールの援護射撃を開始する。
『あっ! てめぇ、戻ってきやがったかっ!』
 トレーラーを護衛しているアーゼンに乗っているのは、アレクだったらしい。ようやくベルゼビュールに気付いて、アレクが反応する。だが、エリックの質問には答えていない。
「こうなれば無尽蔵に湧き出すぞ!」
 敢えてアレクを無視して、続けるエリック。
『何も知らねぇ癖にほざくなっ!』
『それがこの先も敵が居るらしくて、グリッドが今排除に…』
 無視されたからか相手がエリックだからか吐き捨てるアレクに、アルファが続ける。どうやら、八方塞がりの状況らしい。さすがに中心部ともなれば警戒は甘くないようだ。
「とりあえずトレーラーの護衛は任せろ」
 そんなアレクを無視し、アルファに向かって呼びかける。
『了解、アレク達もトレーラーをよろしく!』
 言うが早いか、バフォールはあっという間に敵の集団に飛び込んでいく。バフォールが凄まじい勢いで無人機を撃破し、討ち漏らした分はアーゼンとベルゼビュールが仕留める。
これでなんとかなるかと、エリックが思った時。ふと思い出してちらりと義足のアーゼンの方を確認すると、おびただしい数の無人機の群れがこちらに向かっていた。まだ遠いが、そこまで間を置かずにこちらを射程に捉えるだろう。
「くそ、さっき撒いた奴らか…!」
 思わず呻くエリックに反応したのか、アレクのアーゼンもちらりと目を遣る。
『てめぇは助けに来たのか迷惑かけにきたのかどっちなんだよっ!』
「…俺に言うな……アリシア、とりあえずそこのアーゼンを収容してくれ」
 アレクの至極もっともな意見にげんなりしつつ、やっと追いついて来たアーゼンを確認したエリックがトレーラーに通信を入れる。
「了解しました」
 返事と共にトレーラーの貨物部側面が開き、アーゼンがぎこちない足取りのまま乗車する。それをバックモニタでちらりと確認したエリックは、更にトレーラーの向こうから向かってくる機影に気付いた。
(また敵か…!?)
 と思ったエリックだったが…
『グリッドっ!』
 アレクが、地獄に仏を得たように叫ぶ。向かってくるのは、偵察から戻ってきたと思われるグリッドのアーゼンだった。グリッドが向こうの敵を排除してくれたのなら、なんとかその方向に向けて突破できる筈だ。否が応にも期待が高まる。
「………う…」
 しかしその期待を奪う事態を目の当たりにし、思わず呻くエリック。
こちらに駆けて来るグリッド機の後ろからは、地下空間で見た巨大二脚型ロボットがその巨体を揺らしながら追いかけて来ていたのだ。
「居るかもとは思ったが、何もこんな時に……!」
『向こうからデカいのが…って、こっちもか…』
 通信の届く範囲に入った途端にこちらの状況を理解したのか、うなだれるような声を上げるグリッド。がくりと来たのはエリックも同じだった。
「どうしろっていうんだ……」
 襲い来る無人機を撃破しつつ、募る絶望感に呟くエリック。T字路の一方ではキリ無く出現する無人機を相手にバフォールが奮戦し、エリックが来た方からは、大量の無人機。更に残る一方からは巨大メカ。
「……正に…」
 絶体絶命というやつだった。


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