おまけ-1
「これ、食べれるのかな……」
リーちゃんに上手く言い包められた気がするんだけど。
手に持った小さな紙袋を見ながら、そう思った。
久々に仕事以外での徹夜作業が“チョコ作り”になるとは思わなかった。しかも、作り上げたのは初めてかもしれない。リーちゃんと同じくトリュフというものを作ったはずなのに、何故か見た目は違ったし、微妙に色も違う。味はというと………食べれなくは無い。
リーちゃんは疲れ切った顔で笑って、『きっと大丈夫』って言ってた。まあ、気持ちの問題ってことで。
この時、まあ、すっかり忘れてたわけだ。もっと大事なこと。
これは家に帰って直ぐに気付くことになる。
「ただいまー」
「……おかえり」
リビングに行くと、青筋立てたヒューイがケータイ片手に仁王立ち。咄嗟に悲鳴が出そうになったのを飲み込んだ。
そう、今日はヒューイが帰ってくるの朝方だってことと、昨日の晩から実家に居たことの連絡をすっかりうっかり忘れてた。しかも、昨日の晩の時点でケータイの電源は切れてたし、実家から連絡することも頭に無かった。
「どこに行ってた?」
思った以上に冷静な声。コワイんですが……。目がいつもみたいに笑ってません。背中に嫌な汗が流れる。
「あ、いや、リーちゃんトコ……デス」
「ほう。一晩中か?」
結果的に無断外泊。怒る、絶対怒る。解かってたのに、何で連絡しなかったんだろう。私のバカ。これはもうなんかイベントどころの話じゃない気がする。
「ち、ちょっと、時間掛かっちゃって……」
「“ちょっと”か?」
「え、いえ、“かなり”かな……ゴメンナサイ。連絡するの忘れてマシタ」
謝って許してくれるかどうか解かんない。つーか、ダメだよね、多分。心配性かつマメな性格のヒューイに謝罪が通るとは思えない。こういう展開は前にもあった気がするなぁ……現実逃避しちゃおうかな。
「自分の立場、未だ解かってないのか?」
「……解かってる……」
つもりです。うっかりしてるのはご愛嬌ってワケにはいかない、よね…?
「……はぁ。もういいよ」
「ごめんなさい」
怒るを通り過ぎて、呆れさせたらしい。大きな溜息がヒューイの口から突いて出た。どうやって渡そうか、なんて悩んでたのがもうバカみたいじゃないか。もう、最悪だ。
「…………、リアナ」
近付いて来たヒューイに思い切り抱き締められた。…………あれ? 怒って、呆れてるんじゃなかったの?
「な、なに?」
吃驚した。急にどうしたんだろう?
髪に顔を埋めながら、ヒューイが囁くように言う。
「頼むからあんまり心配させるな」
「……うん。ごめんね」
背中に腕を回して、額をヒューイの肩に寄せた。
「……で、この甘ったるいニオイは?」
髪から顔を上げたヒューイは今度は首筋に顔を埋めてきた。
あ、そうか、一晩中やってたから、匂いが染み付いてたんだ。気付かなかった。
「あ、あのね、今日、バレンタインでしょ? リーちゃんと一緒に作ったの」
ヒューイはピクリと身体を揺らし、顔を上げた。しかも、目を丸めて。
「作った?」
「うん」
「作ってもらった、じゃなくて?」
し、失礼なっ 普段、何も出来ないからって、そんな嘘吐かないしっ