White Day -side;arrk--4
「な、なんで寝てんの!?」
目覚めて第一声がコレだ。
顔を真っ赤にして、この状況を信じられないと言った顔でオレを見下ろしてくる。溜息が出そうなのを抑えて、身体を起こした。
「お前がシャツの裾掴んだまま離さねぇから仕方ないだろうが」
あれから一向に起きる気配のないリーをベッドに寝かして、離れようとしたら裾を掴んで離さなかった。つーか、離そうとすると、泣きそうな顔になるからどうしようもなく、そのまま一緒に寝た。
「起こせばいいじゃないか!」
無茶苦茶だな。オイ。
「お前ね、そんなに疲れてんなら無理して来なくていいんだぞ?」
「―――」
リーは一瞬目を見開いた。そして、そのまま俯いて口を噤んだ。その代わりにギュッと握った手が小さく震えてる。
「学校に教会の仕事を両立してるってだけでシンドイんだろ。別にオレは自分のことなら何とかなるんだよ。週末の休みにわざわざ……」
「ッ」
無言で顔を上げたリーはこっちを思い切り睨んできた。その上、涙を溜めて、さっきとは違う意味で目も頬も赤くなってる。
「…………もうっ 来ないよっ!」
自分の手で涙を拭うと、リーは部屋から走って出ていった。早とちりもいいトコロだ。
怒らしたりするのは今が初めてなわけじゃない。『良くあること』なんだけど、放っておいて良いてことはない。時間も時間だ。外は陽が落ちて、暗くなり始めてる。
――――
―――
――
―
どこへ行ったかなんてのは何となく解かる。
セイル川の河川敷。
どうもそこが『一人になりたい時』の居場所らしい。こうやって、怒らせた時は大抵そこにいる。
そして、やっぱりそこにいた。
「リー」
河川敷の草の上で膝を抱えて座り込んで、塞ぎこんでる。名前を呼んだ位じゃ返事なんてしない。これは今までの経験だ。こういうトコロは変わってないんだ。
部屋から持ってきたリーのコートを頭からすっぽりと掛けて、ポンポンと頭を撫でた。
「上着も持たずに出て行くなよ。まだ寒いんだ、風邪ひくぞ」
「…………」
反抗期みたいな拗ね方だな。人の話も最後まで聞かないで、その度にこうなるのはどうなんだ。片手じゃ数え切れないぞ。
「取りあえず部屋に戻るぞ」
「イヤだ。もう行かないっ」
顔を伏せたまま、リーは投げやりに返してきた。
何、ムキになってるんだか。
「風邪ひきたいのか? 此処は風が通るから寒いんだよ。それにもう暗いだろ」
「別に『来てくれ』なんて頼んでない」
「そういう問題じゃねぇ。我侭言ってんな。戻るぞ。もう立て」
無理やりに腕を引いて立たせて、部屋に戻った。その道中、リーは全く何も喋らず、ただ、小さく嗚咽を洩らしてるのは聞こえてきた。