『兵士の記録〜エリック・マーディアス〜第二部』-5
集会所。
基地の兵士を一同に集めて、臨時集会が開かれていた。
一段高くなっている壇上に、責任者と男女の男の方が居た。
「あ〜、今日研究所の職員達が此処に来たのは皆も承知の事だと思う。彼らの目的は、ここで新型ワーカーの実践データをとる事で、その為に本日付けでこいつがテストパイロットとして、そしてその補佐的に研究員達がこの基地に駐屯する事となった。誰かが異動になる事は無いので、余計に騒ぐな。以上!」
男の紹介も何も無く、それで集会は終わった。
元々無駄な騒ぎを起こさない為に開いた集会だったのだろう。
会場は一気にざわめきを取り戻し、皆思い思いの場所へと散って行く。
ちらりと見ると、壇上の男と責任者も、壇から降りて何か話し合っていた。
エリックは暫くその光景を見ていたが、やがて興味を失ったように背を向けると、人の波に混じってトレーニングルームに向かった。
結局カイルが戻って来た訳では無いのだ。
エリックは不機嫌そうに肩をいからせ、そして直ぐにいからせた肩を落としてとぼとぼと歩きだす。
それを追い抜いて歩いて行ったミーシャも、後ろ姿に哀愁が僅かに滲んでいた。
先ほどはつい以前のように振舞っていたが、昨日の事が頭をかすめ、声を掛けるのは躊躇われた。
そうして迷っている内に、ミーシャは人に紛れてしまった。
「………ふぅ……なんだかなぁ…」
ミーシャの消えていった人ごみを見つめて一つ嘆息すると、エリックはトレーニングルームへ向かう歩調を上げる。
これだけ周りに人が居るのに…いや、周りに人がいるからこそ、孤独感が募ったからだ。
「……シミュレーターしか相手にしない生活…我ながらアブナイな……」
冗談めいて呟いてみるも、考えてみれば全く冗談になっていなかった。
「……やめやめ、さっさと訓練してシャワー浴びて寝るか……」
独り言を連発しながら、エリックはやっとたどり着いたトレーニングルームへと入る。
「さっさと強くなって、こんな生活とはおさらばしたいな、全く……って、本格的に独り言多いし。寂しい人間ってやつか……」
考えるのを止めても漏れる呟きに自嘲しながら、エリックはシミュレーターに乗る。
まぁ、独り言が出るだけ、悪態ばかりついていた昨日よりはマシかもしれない。
結局。エリックはそのまま自分で言った通り、シミュレーターで訓練した後シャワーを浴びて、とっとと眠ってしまった。