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『兵士の記録〜エリック・マーディアス〜』
【SF その他小説】

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『兵士の記録〜エリック・マーディアス〜』-25

歓喜の声を上げて、エリックは再び前進を再開する。
するとそれに気付いたように、動きを止めて居た巨大ロボットも動き出した。
まだ無事な方の腕を振り上げる。エリック達を潰そうとしているようだ。
「くそ!回避が間に合わない!」
 ミネルグを担いだペール?の速度は、どんなに急いでも歩き並みだ。
よけられる訳が無い。ペダルを踏む足が竦んだ。
「…撃って!そのまま進むのよ!」
 突然聞こえたクリスの声。エリックは、その声に咄嗟に従う。
固まっていた足を動かしてペダルを踏み込み、ペール?の脚を動かす。
連続してライフルから放たれる銃弾。
銃弾は巨大ロボットのモノアイを撃ち抜き、頭部を内から破壊する。
標的を失った巨大ロボットは、まるで見当違いな場所に拳を振り下ろした。
「!??」
 これには、撃った本人が驚いてしまった。狙いも何も、付けた覚えなど無いのだから。
見れば、担いだミネルグの手が、ペール?の腕を支えて照準をつけていた。
「ふぅ……なんとかなったわね………」
 クリスの呟きと共に、ミネルグの腕が再びだらんと垂れ下る。
「お前……動かせるのか…?」
安堵と、今までからかわれて居たのではないかという疑心に、エリックは声を掛ける。
「…うん…といっても…動かせるのは腕一本…それも少し無理あるって程度だけど…」
 幾分はっきりとしてきた声で言う。意識ははっきりしているようだ。
「そうか…」
もはや動かない巨大ロボットを尻目にペール?を歩かせ、エリックは頷いた。
色々あったが、これでなんとかなりそうだ。扉ももう目と鼻の先である。
「よし、それじゃ、とっととこんな地下からはおさらばするか。」
「………そうだね………」
 予想に反して静かな声で言うクリスに、エリックは眉根を寄せる。
「どうした?傷が痛むのか?」
「………それもあるけど…」
いつに無く歯切れの悪いクリスに、エリックは少し心配になったりする。
先程はどさくさ紛れに言ってしまったが、よく考えればあれは告白というものだったのだ。
「けど……?」
 やや緊張しながら、続きを促す。
「………やっぱり、出てからにするわ。油断大敵、よ。ほら。」
「後でか……って、何!?」
 クリスの言葉に脱力したり警戒したりと忙しいエリックが見たのは、後方かなり離れた所から現われた中型二足ロボットの集団だった。
「や、やばいぞ!」
 さすがに、エリックがあの数を相手にするのは無理がある。
「落ち着いて。あたしが狙いを付けるから、撃てって言ったら撃って。移動も忘れずに。」
「了解!」
 クリスの言葉と共に、ミネルグの腕が再びペール?の腕を持ち上げる。
「撃って!」
 クリスの合図と共に、エリックはトリガーを引く。
吐き出された銃弾は……巨大ロボットに当たって、あっさり弾かれた。
「おい!?」
 外した。そう思った。
「まぁ、見てなさいよ。」
焦るエリックとは対照的に、余裕綽々といった感じでクリスは言う。
その直後。突然巨大ロボットが暴れだした。丁度股下に居た中型ロボットを巻き込んで。
攻撃を受けた中型ロボットは、攻撃対象を大型ロボットに変更し、戦闘を開始する。
「ビンゴ!!あのでかいのはカメラが壊れただけだったからね。きっかけを作ってやればまた動き出すのよ、あの通りね。……全部推測だったけど。」
「あのなぁ……」
「ほら、もう扉出たわよ。撃っちゃって。」
上り坂になっている扉の外で、クリスはエリックに攻撃を指示する。
エリックは訝しがりながらも、ペール?にライフルを撃たせる。
すると銃弾が扉のコントロールパネルを打ち抜き、扉が閉まって行く。
「おい、もしこの先が埋まってたらどうするんだよ。」
「あはは、大丈夫よ、きっと。なんとかなるわ。」
あっけらかんと笑いながら、クリスは答える。実は、訊ねたエリックも苦笑半分だった。
根拠など何も無かったが、エリックにもそんな気がしていたのだ。


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