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『兵士の記録〜エリック・マーディアス〜』
【SF その他小説】

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『兵士の記録〜エリック・マーディアス〜』-20

第十話・脱出行
《変後暦四二三年四月?日》


狙いを付ける二足歩行のロボット。
気が緩んでいたところに完全な不意打ちで突然の横っ飛びを強いられ、体勢を崩したミネルグには、避ける手立ては無い。
咄嗟に左手のシールドを構えるも、相手の爆発武器に通じるか否かは疑問だ。
その瞬間。
「うおぉぉぉぉおおお!!」
 ズダンダンダンダンダン!   ガン!
エリックのペール?が、敵機に向かって手に持ったワーカーライフルを掃射していた。
狙いも何も付けていない為命中率は悪いが、それでもワーカーよりやや小さい敵機の体勢を崩すことは出来た。
そしてその隙に、ミネルグは右手に持ったワーカーマシンガンを振り上げ、連射する。
弾丸は過たず敵機を捉え、その小さめの機体に無数の穴を穿つ。
そして蜂の巣の様相を呈した敵機は、バヂッと音をさせて倒れ、そのまま動かなくなった。
「……ふぅ………」
 敵機が完全に沈黙したのを認め、クリスがため息をついた。
「…………びびったぁ……」
通信機で繋がっているクリスに聞こえないよう呟いたエリックは、未だに先ほどの余韻で手が震えている。初めての実戦だったのだから、無理も無い。
「油断大敵ね……気を引き締めて行きましょ。それと、なるべく早く。」
 そのまま歩きだすミネルグに、ペール?が慌てて続く。
「あ、それと……」
 歩みを止めないミネルグの中で、クリスが思い出したように言う。
「……さっきのあれ、銃撃はもっと正確にね。」
「………」
 少し…いや、大いに礼を期待していたエリックは、やや気落ちしてしまった。
まぁ、一歩間違えばクリスに当たっていたかも知れないのだ。文句は言えない。
「…了解。」
 がっくりと答えるエリック。
そして、付け加えるように
「それと…………ありがと。ちょっと見直したわ。」
 照れ臭そうな声が、通信機から聞こえてきた。赤くなっている顔が目に浮かぶようだ。
「……あ、ああ。どういたしまして。」
エリックも、なんとなく照れてしまう。
手の震えは、止まっていた。
          

      ダダダダ!!    ズゥゥン………
 また一機、ミネルグが敵を撃破する。
最初の一体を撃破してから三十分弱。
それを皮切りにぞくぞく出てきた二足ロボットを相手どり、クリスは獅子奮迅の活躍をしながらエリックを導いていた。
たかが二キロほどとは言っても、崩れたビルを迂回し、敵を倒しながら進むのだから、まだまだ先は長い。
ビルの中や建物の影から現れる敵機を現れた瞬間に仕留め、少しずつ前進してゆく。
エリックから見て、相手の動き、性能は共に悪くない。
むしろエリックでは、一体を相手にするのも辛い程だ。
現に彼は先ほどから、ペール?の片手に装備したシールドで身を守りながら、クリスに続き、たまに援護射撃をするだけである。
…クリスの強さが異常なのだ。
クリスの駆るミネルグが敵を感知し、手に持ったマシンガンで狙いを付け、撃つ。
その間、約一秒弱。
砲身から吐き出された弾は、吸い込まれるように敵機に命中し、沈黙させる。
どうやらクリスは、最初の一機で敵の弱点を掴んだようだ。
とはいってもあの短時間で正確に弱点を狙うなど、そうそう出来る事ではない。
ミネルグの挙動も、クリスの反応と狙いも、ずば抜けていた。
「やっぱ凄すぎだぞ……」
 半ば呆れたように呟きながら、エリックはクリスに続く。
シールドを構えながらも、エリックは自分に弾丸が飛んで来るとは思っていなかった
弾を撃つ前に片っ端から敵を仕留めるクリスは、エリックにとって守護神とも言える存在だ。
雷神が仲間に居たら、こんな感じなのだろうか……?
「………ん?」
 そこまで考えた時、エリックの頭の中で、確信に近い一つの推測が生まれた。
しかし、その事を伝えられる程、クリスは今暇をしていない。


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