『兵士の記録〜エリック・マーディアス〜』-18
第九話・変動
《変後暦四二三年四月?日》
「ちょっと止まって。」
廊下を歩き続けていたエリックとクリスだったが、突然のクリスの制止によって歩みを止めた。
「どうした?」
「しっ………何か聞こえない?」
訊ねるエリックを制し、クリスは耳を澄まながら訪ねる。
「……?」
クリスのその様子に、エリックも耳を澄ませてみる。
ゴゴゴゴゴゴ……
確かに、何か聞こえる。地鳴りのような、低い音が。
それに、微かな震動もあるような気がする。
「これは……地震か……?」
少し大きな地震が来れば、此処は崩れ落ちてしまうかも知れない。
だが、地震にしては揺れていない。
「判らないわ……でも…何か嫌な予感がする……早く行きましょう。」
僅かに不安を滲ませつつ、クリスは答える。
「そうだな。走ろう。」
エリックは短く答えると、クリスと顔を見合わせて走り出す。
程なくして、歪んで開いた扉が見えてきた。二人が入って来た扉である。
電気が点いているが、大部分欠けている為に、扉の向こうは灰暗い。
「よし、さっさと脱出だ!」
エリックはその扉から飛び出そうと、更に加速する。
その瞬間。
「伏せて!」
クリスを追い抜こうとしたエリックの足に、クリスの足がかけられた。
「ぐあっっ!」
バン! パン!パン!パン! ジュゥゥン……
うめいて倒れたエリックの頭上を掠めるように銃弾が通り過ぎ、クリスが銃を抜いて銃撃してきた何者かに発砲していた。
「!?」
突然の事に理解が追いつかないエリックは、急いで立ち上がり、周りを見回す。
「ふぅ……危なかったわね……」
息をつくクリスの視線の先にあるのは、煙を上げて停止している四本足の小型ロボット。
どうやらエリックを狙ったのはこいつらしい。
「これは………ロボット…?」
「…都市の機能が回復した事で、こいつらまで動き出したみたいね……」
転がるロボットを足で軽く蹴ると、クリスは呟いた。
「こうなったら、なお更急いだ方が良いな。行こうぜ。」
「そうね。」
エリックに答えると、クリスは扉の外を伺い、安全を確認して飛び出す。
「さ、あんたも一緒に来なさい!」
そしてそのままエリックを引きつれて、自分のワーカーへと乗り込んでいった。