カウントダウン-2
「お願いします」
「はい。お任せ下さい」
アースの腕を受け取ったミヤは急いで医務室へ走った。
「……ふ……」
キャラはエンの胸にしがみついて肩を震わせる。
エンはキャラの背中を少し擦ると、抱いたままよいしょっと立ち上がった。
「私が連れて行こう」
ラインハルトが腕を出してきたが、エンはそれを断る。
「キャラってばずぶ濡れで血だらけなんで汚れちゃいますよ〜でも、部屋まで案内してもらっていいですか?」
部屋を知らない、と言うエンにラインハルトは頷いてギルフォードに顔を向けた。
「ギル、こっちは頼んだ」
ギルフォードは頷いて各国の王達の所へ行く。
魔物が押し寄せて来ているとわかった時点で、住民に緊急避難命令を出した。
ファンの地下には遺跡があり、その遺跡からは洞窟がファン全土に伸びている。
普段そこには守護神オーウェンが居て、めったに人は入らないのだが今は緊急事態。
しかも、その遺跡はファンの住民、観光客全員が入ってもまだ余裕のある広大なものだった。
キャラの部屋に入るとアビィはエンの頭から飛び立ち、暖炉にプッと炎を吐く。
一瞬にして炎の着いた暖炉は部屋を赤く照らし、暖め始めた。
「まずお風呂入ろっか?」
エンの言葉にキャラは胸に顔を埋めたまま小さく頷き、アビィがバスルームのドアを開ける。
しかし、バスルームに入った所でエンはビタッと固まった。
「あ〜…っと……1人で入れる……よね?」
出来れば1人にしたくないが……キャラを降ろしたエンは肩に手を置いて顔を覗き込んだ。
絶対酷い顔をしている自覚があるキャラは、エンの顔を左手で塞ぎ、右手で涙を拭きながら後ろを向く。
「あはは、恥ずかしがる元気があるなら大丈夫だねぇ〜ついでにアビィもお願いね」
エンはアビィにウインクしてバスルームを出て行った。
「キアルリアは?」
部屋でおろおろと待っていたラインハルトは、バスルームから出てきたエンに聞く。
「大丈夫ですよぉ〜用心の為にアビィ置いてきましたしぃ〜」
何の用心だろう?と首を傾げるラインハルトにエンは苦笑した。
「キャラには無いと思うんですけど〜…絶望して自殺……とか?」
エンの言葉に驚いたラインハルトは慌ててバスルームに行こうとする。