カウントダウン-10
「まさか魔物が来てたとはな……緊急避難命令はそれでか……」
ダリルはアースにスープを渡して呟く。
「緊急避難命令……」
アースは器を受け取ると膝の上に置いた。
「ああ、ファンの地下にでっかい遺跡があんだよ。そこは守護神様の結界で守られてっから、ある程度は安全ってわけ。……自分で食えるか?」
ダリルがスープを指差す。
「ありがとうございます。大丈夫です。……って事はここは避難場所っすか?」
「いや、違う。避難命令が出た後、俺らは船を安全な場所に移動しに来たんだ」
アースの質問にケイが答える。
「したらよぉ〜コイツが沖に行けってうるせぇんだよ」
ダリルはケイの頭を掴んでぐりぐり揺らした。
「……だって、なんか行った方がいい気がしたんだよ〜……」
「まぁ、コイツは小せえ頃から海に愛されてるっつうか……勘が鋭くってなぁ〜結果、お前ぇさんがプカーって浮いてたわけだ」
ダリルはケイの頭を離して、こんな感じで浮いてたぜ、とジェスチャーして見せる。
「驚いたぜ〜引き上げてみたらアースだし、体の右側はズタズタだし、息してねぇし……あ、人工呼吸したの親父だから」
ケイの言葉に思わずダリルと視線を合わしたアースは、気まずく礼を言う。
「どうも……」
「いや……」
ダリルはプカーと浮いたアースの真似をしたまま、同じく気まずそうに答えた。
「つうわけで、息を吹き返したが意識不明のお前ぇさんを動かすわけにも行かず、入り江に留まってるってこった。おっし、少し熱はあるが体力はありそうだから大丈夫だろ。食って治せ」
ゲイッシュに肩を叩かれたアースは、痛みに顔をしかめつつ頭を下げる。
「ありがとな。ケイのおかげで命拾いした」
アースは左手でスープを口に運びながらケイに礼を言った。
「良いって事よ!知り合ったのも何かの縁だったんだろうしな」
ケイは焚火に木をくべると、暖めたパンをアースに渡す。
「城の方はどうなってっか知ってるか?」
「一応、招待された貴族らは避難してたな……」
安全な避難場所があるなら海を渡って帰る危険を起こさない方が良いとの判断だろう。