加柄割人 VS 高校番長-1
俺の名前は加柄割人(カガラカツヒト)。県立筆木高校の三年。歳は十九だ。
おやっ?と思ったヤツは勘がいい。あんたが思っているとおり、俺は去年の卒業試験の追試で不合格になり留年した。笑いたきゃ笑うがいい。
たが街で見かけたら容赦なくテメェを再起不能にするから憶えとけ。
留年ってのは不思議なもんで、クラスの奴らは不良しかしないものと思っているみたいだ。昔から不良のレッテルを貼られてる俺には箔が付くだけでの事だがな……。
そんなクラスの奴らは俺を恐れて誰も寄って来やしねぇ。まぁその方が俺の気も楽ってもん・・・・。
だぁぁぁ−−!!!!
嘘です。ぜんぶ強がりです。すっっごい淋しいんですボク……。
友達がいません。みんな僕を恐がって話し掛けてきてくれないんです。
ボクから話し掛けたいのは山々なんですが、ボクは緊張しいの恥ずかしがり屋。人前で話すとドモりっぱなし。だから話し掛ける勇気が無いんです。
不良にそんな人いるわけない! とか言われるかも知れませんが、そもそもボク不良じゃないんです。昔は、と言いますか今も変わらず真面目なんです。
廊下にゴミが落ちていたら、誰も見てないのを確認して(恥ずかしいから)、拾ってゴミ箱に捨てますし、犬や猫も大好きで、正直に言いますと「可愛いでちゅねぇ〜」なんて事も言ったり言わなかったり……。
そんなボクが不良に思えますか? でもみんなからは不良って言われて敬遠されるんです。もう泣きたいです。
ボクが何で不良って言われるようになったか? 原因は分かっています。きっと、いや絶対高校一年の時が原因なんです。それを今から話したいと思います。
高校に入学して間もなくの事、ボクはクラスメートの高杉君にとんでもないあだ名を付けられました。ボクの名前、加柄割人を(ガラがワルいヒト)って読んだんです。それがいつのまにか(極ワル)っていうあだ名になりました。……ひどいです高杉君。
しかも何がどう伝わっていったのか、もう一人の自分『極ワル』は、高校一年にして柔道と空手が有段者なみで、何人かを病院に送っていました。少年院にお泊りした経験もあるそうです。もちろん、全く以て記憶にございません。柔道なんてしたら本人が病院行きです……。
そんな噂話が、あろうことか当時、高校で一番強い“番長さん”の耳に入ってしまって、放課後体育館の裏に誘われました。
ボクは番長さんを知らなかったので、嬉しくて跳んでいきました(有りもしない武勇伝が先行していたせいで、同学年の友達が作れなくなっていましたから、人に誘われる事が無かったんです)。
そしたら先輩は“タイマン”と言うものをするぞとおっしゃいました。だからボクは訳も分からず、
「はいっ!」
と元気よく返事をしたところ、先輩は、
「テメェがどれだけ強いか知らねぇけど、俺をナメてると痛い目みるぞ!」
と怒りました。(のちに分かった事ですが、タイマンとは1対1の喧嘩のことだそうです。……それならそう言ってくれれば遠慮したのに……)。
ボクと先輩は体育館裏でタイマンをしました。
そんなこんなでボクはそのタイマンに勝ちました。さすが番長さんでした。とっても強かったです。でも僕がギリギリ、偶然、ほとんど互角でしたが勝ちました。番長様が弱いわけではありません。絶対強いです。めちゃくちゃ強いです。次は絶対負けます。
数日後には、ボクがタイマンで番長さんを病院送りにした事が学校中の話題になりました。
真しやかに噂されていた武勇伝は、本当に病院送りになった人が現われたせいで、はっきりとしたモノになってしまいました。
それからはみんなが陰でボクの事を“極ワル”と呼ぶようになりました。
みんながボクを見る目は不良を見る目でした。
不良じゃないのに……。
・・・・。
読まれている方、納得して下さい。どうやって番長さんに勝ったかを書いて、もしご本人様にばれてしまったら、ボクが再起不能にされてしまいます。
・・・・。
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