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sweet chocolate
【OL/お姉さん 官能小説】

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sweet chocolate-2

結局コータくんがわぁわぁ騒いでいる間にしゅーちゃんは忘れ物を取ると、再び外出してしまった。

「でも修平さんの手作りチョコ、旨そうですよね。いいなぁ、食いたいなぁ」

「確かに」

って。腹壊しそうってことは、しゅーちゃんには手作りチョコじゃないほうがいいのかな。クリスマスのチーズケーキだって、年末のお鍋だって褒めてくれたのに。あぁ、もうっ。

「コータくんがチョコ食べたいっていうから私まで食べたくなっちゃったじゃない。買ってくる。コンビニ行くけど何か用ある?」

「え?今ですかっ?オレ、もう外出するから大丈夫です」

「時間大丈夫だったら戻ってくるまで留守番お願いしてもいい?」

「はい、いってらっしゃーい」

コータくんに見送られて営業所を出てエレベーターホールへ行くと、しゅーちゃんがエレベーターを待っていた。

「お疲れ様です」

「あぁ。どっか行くの?」

「チョコ食べたくなっちゃって。コンビニに」

「そっか」

そのまま前を向いて、こっちを見てくれないのは職場だから?お互い黙ったままエレベーターに乗る。職場でそっけないのはいつものことだけれど、なんだか今日はやけに悲しいよ。思わずうつむいたら、涙が出そうになって自分でも驚いた。大好きな人が隣にいるのになんでこんなに遠く感じるんだろう。昼休みも終わりに近いのに下りのエレベーターは混み合っていて、降りた時にはしゅーちゃんとはぐれてしまった。思わずため息が出る。
コンビニでチョコを見てもテンションはあがらない。どれにしようか迷ってようやく手にした商品が突然すっと手から離れていく。振り向くとしゅーちゃんが立っていた。

「こっちのほうが上手い」

私が持っていた商品を棚に戻すと悩んでいたもう一方の商品を手に取り、レジへと向かってしまう。え?

「鈴木、何飲む?」

慌てて追いかけるとホットドリンクのコーナーでそう話しかけられた。

「こ、ココア」

「チョコ食うのにココアか?どんだけ好きだよ」

呆れたように笑うしゅーちゃんはいつものしゅーちゃんだ。なんだかホッとする。ココアとブラックのボトルを持つとしゅーちゃんはレジに向かう。

「86番のタバコ。コレとコレだけ袋に入れてもらえますか?」

チョコとココアを袋に入れるように店員さんにお願いする。

「あ、自分で…」

「いいよ。このくらい」

「す、すみません。ごちそうさまです」

店を出ると袋を差し出される。

「あんまり食いすぎんなよ。吹き出物できるぞ」

そう笑うとしゅーちゃんは行ってしまった。でもさっきより寂しくないのはなぜだろう?私もしかして餌付けされてる?っていうか吹き出物って…ニキビじゃないんだ。せめて大人のニキビってして欲しかったわ。でも。ちょっとしたことでテンションは戻る。営業所に戻ってコータくんを見送ると、しゅーちゃんが買ってくれたチョコを1つ口に頬張り仕事に取りかかる。あ、確かにコレ、美味しい。この営業所に来たばかりの頃は、一人で留守番なんてちょっと心細かったりもしたけれど、電話さえ鳴らなければ仕事ははかどるし、今では割と好きな環境。一歩間違うと煩わしくなってしまう女子同士の関わりとかもないし。総務的な雑務から事務的なことはほとんど一人でこなさなきゃならないのはしんどい時もあるけれど。

定時にあがって、近くのデパ地下に足を踏み入れる。とりあえず職場の人々の分をなんとかしなくちゃ、うーん。9人分。予算はこれくらいとして、まとめてどーんと1つにするか、個々に配るか…まとめてだといかにも義理っぽいし、かといって個々に買うのも9コ同じものを買うか、それぞれに合った物をチョイスするか…あ、チョコ苦手な人もいるからやっぱりそれぞれに選ばないとダメかな。それにしてもバレンタイン間近だけあってデパ地下は混み合っている。でもみんなどこか幸せそうな顔。しゅーちゃんにはコレとは別に渡したいけれど、手作りは却下されちゃったし、どうしよう。結局悩みに悩んでそれぞれにイメージしたものを一つずつお買い上げ。食いすぎんな、と言われたけれど自分の分も買ってしまった。だって、大好物ですもの。甘い物。しゅーちゃんが作ってくれた甘い物食べたいなぁなんて思いながら一度営業所に戻って荷物を置いて帰ろうと歩き出したところでコートのポケットの中、携帯が震える。ディスプレイに浮かんだのは、鈴木修平の文字。慌ててフリックする。

「もしもし?」

「後ろ。振り向いてみ?」

「え?」

聞こえて来た声の指示通りに振り向くと、少し離れたところにしゅーちゃんが立っていた。

「しゅ…主任…」

職場のすぐそば。誰の眼があるかわからないから慌てて言い直す。しゅーちゃんはそんな私の様子を面白そうに眺めている。

「大荷物だな」

「は、はい…」

「女子は大変だな。営業所に置きにいくんだろ?オレも一旦戻るから持ってやる」

あ、中身バレバレ。すっと差し出された手に、戸惑いつつも紙袋を差し出す。そういえば、忘年会の時もこうして私が持たなければいけない荷物を持ってくれたな。そう。初めてしゅーちゃんを知ったのもこんなシチュエーションだった。まだ入社したばかり、支店に配属されたばかりで。名前も知らない背の高い無口な男性が重い資料の束を運ぶのを手伝ってくれた。お礼もろくに言えないままいなくなってしまったその人が営業所からたまたま手伝いに来ていた鈴木主任だと知ったのは随分あとの支社合同のイベントの時だったっけ。たまに営業所に電話することがあって、鈴木主任が出るとものすごく緊張してしまったのを今では懐かしく思い出す。

「ほら。ぼけっとしてると置いて行くぞ」

「はい」

職場の目の前だから並んで歩くとしても微妙な距離感はあるけれどちょっとくすぐったい。


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